研修旅行を行いました

 任意団体ヴィープス(木原一裕チェアマン)は9月4日、年に一度の研修旅行を実施しました。

今回の訪問先は、同じ会員の株式会社丸紀印刷(大阪市平野区)さん。ヴィープスとしては数年振りとなる大阪訪問となり、期待が高まります。同社製造現場の見学の後、金光雅志社長による講演を聴講しました。

 大阪メトロ谷町線の平野駅に集合した後、タクシーに便乗して同社へ。金光社長が一同を歓迎した後、二班に分かれて本社工場を見学しました。丸紀印刷さんは、本社工場と至近にデジタル工場があり、このほかにも福岡市博多区には九州工場も抱えます。

 全日本シール印刷協同組合連合会の「シールラベルコンテスト」では高頻度で入賞を果たしていて、「技術優良認定工場」の指定も受ける企業。そんな丸紀印刷さんの製造現場を視察させてもらい、刷り方だけでなく品質管理術、印刷前と印刷後の準備の大切さ、さらには印刷との向き合い方や極意、真理に触れるようなアドバイスも授けてくれました。さすがシール印刷大阪府協同組合の技術委員長さまです。

 

 また徒歩至近のデジタル工場では、エプソンのデジタル印刷機「SurePressL-4733AW」を見学。同機を活用してBtoC商材も企画開発するなど、デジタル技術も追求する姿勢を学びました。丸紀印刷の工場の皆さま、どうもありがとうございました!

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 工場見学の後、講演を受講しました。

 演題は「小さなM&A、買い手側の実際」。丸紀印刷は2025年12月、東京都のシール印刷会社であるパインタック有限会社を譲り受けています。その当事者である買い手本人から、案件の探し方、費用、資金調達、そして買った後の様子まで、“時間を買う”事業承継とも言える「小さなM&Aのリアル」を、実例を交えてお話しいただきました。

 金光社長はM&Aを、設備投資、新規開拓に続く「3つ目の柱」と位置づけています。利用したのは、仲介会社ではなく、売り手と買い手が自分で案件を検索するプラットフォーム型のサイト(BATONZ)です。2〜3年かけて約100件の概要を確認し、財務まで見て検討したのが20〜30件。秘密保持契約を結んで実名交渉に進んだのが4件で、成約に至ったのは1件でした。「焦って決めるものではない」と実感を語ります。

 買うのは設備ではなく、顧客基盤と商圏、そして受注の流れ。決算書はP/L(損益計算書)よりB/S(貸借対照表)を重視し、勘定科目内訳明細書で資産の実体を確かめます。もう一つ見るのが経営者の人となりで、数字の根拠を尋ねたときの反応には結果の原因が表れるといいます。実名交渉まで進みながら見送った案件が、数カ月後に倒産した例も紹介されました。「買えなかった」ではなく「買わなかった」。見送りも立派な成果だという言葉が印象に残りました。

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 成約した案件は、同業で、しかも自社にない商圏でした。決め手は初回面談。実際に受注している商品のサンプルと販売価格を見せてもらい、自社の原価と照らして、その場で「十分に利益が出せる」と判断できたそうです。「サンプルと単価を見て採算を読める。これは同業の買い手にしかない強みだ」と金光社長は強調しました。

 聴講者として、気になるのはやはりお金の話でしょうか。今回の譲渡にあたっては、株式譲渡の対価に役員借入金の清算と役員退職金を加えた形で総額が組み立てられたということです。株式譲渡価格に寄せたことで日本政策金融公庫からの融資を活用し、退職金の原資は譲り受けた会社が取引先の信用組合から調達。自己資金を入れずに組み立てることに成功しました。

 かかった取引コストについても、成約手数料や会計事務所へのデューデリジェンス費用、会費などを合わせても、仲介会社に依頼する場合に比べて大幅に低く抑えられたとのことです。成約価額に対する割合もわずかで、仲介会社に頼めばこの桁では収まらなかったと振り返ります。

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 買った後の成果も具体的でした。譲り受けた会社は2026年3月に単月売上が過去最高を更新し、月次でも黒字。丸紀印刷への外注も継続的に発生しています。もともと営業力はあるのに、小さな印刷機1台では受けきれず失注していた会社。丸紀印刷の設備や技術が使えるようになり、断っていた仕事がそのまま受注に変わったということです。同業同士でも噛み合うのは、相手のボトルネックを自社の余力で埋められるとき――。こう整理しました。

 一方で、丸紀印刷自身の増収は価格改定や設備投資, 新規開拓の効果も含むため、M&Aの成果と言い切れるのは譲受側の数字だけ。自社に対しても正直に切り分けるという姿勢には、説得力がありました。

 講演の最後は、「譲る側になるかもしれない方へ」。廃業した会社のお客様が他社に来ても、版・型、印刷データ、原材料の情報、売値が失われていて、同じものが作れず困る場面が少なくないそうです。この4つが引き継げる状態かを確かめてほしい。株式譲渡だけでなく、顧客や版、データだけを渡す事業譲渡という選択肢もある。そして、体力が残っているうちほど選べる道は多いので、早めに相談を、と呼びかけました。 買う側の話でありながら、いずれ譲る側になるかもしれないわれわれにも示唆に富む内容でした。金光社長、貴重なお話をありがとうございました。