11月の勉強会報告
任意団体ヴィープス(木原一裕チェアマン)は11月25日、東京都千代田区・ちよだプラットフォームスクエアで11月度月例勉強会を開催しました。「心理的安全性はリーダーの仕事、安心して意見が言える職場をつくる」のテーマのもと、オンライン参加を含め23名が参加。人材育成コンサルタントの間野裕子氏を講師に、安心して意見を交わせる職場づくりについて学びました。

エンゲージメントと心理的安全性の関係
冒頭、間野氏は自身のキャリアを紹介。企業の管理職研修や大学病院での人材育成、小学校から大学でのキャリア教育まで幅広く活動されているとのことでした。
最初のテーマは「エンゲージメント」。会社への愛着・信頼・貢献意欲を指し、近年多くの企業がその向上に注力している分野です。しかし「何をすれば満足するか」は世代によって大きく異なり、参加者からも「休日を重視する若手が増えている」「制度が若手に響かないことがある」といった声が上がりました。
間野氏は、「20代と30代前半でも価値観が違う。わかったつもりにならず、対話を続ける姿勢が大切です」と語りました。

ワークで体感する「話したくなくなる瞬間」
本講演はワークを中心に進行。「チャレンジしたいこと」をペアで話し合い、聞き手には“あえて悪い態度”——目線を合わせない、うなずかない、表情を変えない——を取ってもらうという実験を行いました。
多くの参加者が、「話す気がしぼむ」「否定されていないのに、受け止められていない感覚がある」と体感し、わずかな態度の違いが話し手の心理を大きく揺さぶることを実感していました。
また、「話を途中で遮る」「結論を先に言う」「時計を見る、机を叩く」といった態度も、心理的安全性を確実に下げる行為として共有されました。
心理的安全性とは何か
ここで間野氏は心理的安全性を改めて定義しました。「わかりませんと言っても大丈夫」「懸念を口にしても尊重される」と感じられる状態が心理的安全性であり、甘やかすこととは異なると強調されました。
続くワークでは、「心理的安全性がないとき、自分はどんな行動になるか」を共有。「黙る」「無難な発言しかしない」「意見を飲み込む」など、共通項が多く見られました。
さらに、コロンビア号や福島第一原発、潜水艇「タイタン号」などの事故について、”違和感を言えない空気”が大事故につながった実例も紹介され、心理的安全性の重要性を強く印象づけました。

リーダーが意識したい関わり方とマインドセット
後半は具体的な実践方法へと移り、まずはリーダーのマインドセットから解説。組織の目的は経営層だけが握るものではなく、メンバーと共有しながら育てていくべきだという話は、参加者にも深く響いていました。
若手の失敗をどう扱うかについても触れられ、リーダー自身が「失敗談」を開示することで、部下が安心して相談できる空気をつくれると紹介。「若い頃、自分もこういうミスをした」と話すことで、「自分だけじゃない」と思ってもらえる点が印象的でした。
“弱みを強みに変える”リフレーミングの実践
さらに間野氏は、「リフレーミング」という技法を解説しました。落ち込んでいる部下に対し、「ミスを振り返ろうとする姿勢は成長の証だよ」と意味づけを変えて伝えることで、「ダメな自分」から「伸びしろのある自分」へと認識を切り替える方法です。
「キャパオーバーです」には「信頼されている証でもあるよ。一緒に優先順位を見直そう」、「会議で発言が苦手です」には「慎重さはチームにとって貴重な視点だよ」といった声かけも紹介され、弱みを強みに変えながら支援する姿勢の大切さが語られました。

言葉の選び方とアサーティブ・コミュニケーション
リーダーの言葉がけについては、具体例を用いて紹介されました。
・提案には「面白いね、もっと聞かせて?」
・ミスには「報告してくれてありがとう。一緒に振り返ろう」
・質問には「いい質問だね」
とまず肯定する姿勢が大切だと説明されました。
加えて、アサーティブ・コミュニケーション——自分の思いをきちんと伝えながら、相手を責めずに届ける方法も紹介されました。事実 → 気持ち → 選択肢や提案 の順に伝えることで、関係を壊さず改善を促せるという内容です。
心理的安全性七つの質問とまとめ
最後に「心理的安全性七つの質問」という評価ツールが紹介されました。「ミスをしたら咎められると思うか」「困難を提起できるか」などを七段階で評価し、組織の現状を可視化できる仕組みです。
間野氏は締めくくりとして、心理的安全性のゴールは“居心地の良さ”ではなく“チームの力を高めること”と強調されました。日々のコミュニケーションの積み重ねが「言っても大丈夫」「相談してもいい」と思える文化を育て、エンゲージメント向上にもつながるというメッセージで講演は終了しました。


