4月の勉強会報告

 任意団体ヴィープス(木原一裕チェアマン)は4月25日、東京都千代田区神田錦町のちよだプラットフォ―ムスクウェアで4月の月例勉強会を開催。23人が参加しました。

 今回から使用するのは、千代田区の第三セクターでSOHO機能やコワーキングスペースが設けられたビル。東京メトロ竹橋から徒歩5分以内、ほかにも大手町・神田・淡路町などの各駅からも10分弱という新たな場所で開催していきます。

 そんなリニューアル第一弾の講師は、九州・大分県のラベル印刷会社である㈲エイコー印刷社長の安部秀徳社長です。「人材採用のノウハウから応募したくなる求人広告の書き方について」の演題で、人事採用の勘所を実例も交えて90分以上講演いただきました。

 エイコー印刷は現在、社員数24名の企業。安部社長が2009年に大分県別府市の家業に戻ってきた時点では、社員数は15名でした。そこから少しずつ人を増やしてきた経験を通じて、地方の中小企業が採用活動においてどう戦っていくべきかについて「実戦的な採用手法」をお話しいただきました。以下、安部社長の語り口でまとめてみます。

①経歴と背景

 九州産業大学商学部を卒業後、2004年に毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社しました。当時680名規模だった同社は、現在では1万5000人を超える巨大グループに成長しました。リクルートが圧倒的に強かった市場で、電話営業を中心とした広告営業を通じて、採用の現場を肌で感じる日々を過ごしました。

 その後、2009年に家業である有限会社エイコー印刷に入社。印刷オペレーターを経て、2021年から代表取締役に就任。現在も営業や人事、DTP業務に携わりながら会社全体の経営に携わっています。

②採用に取り組む姿勢と環境の変化

 今、採用活動に真剣に取り組むべき理由は「少子化の爆速化」です。人材獲得が年々困難になる中で、採用に向き合う最後のチャンスだと考えています。採用がうまくいかない理由の多くは「考え方」にあります。逆に言えば、考え方を変えれば、採用の質も、会社そのものも変わっていきます。 採用が変われば応募者が変わり、応募者が変われば会社の文化が変わる。その変化が好循環となり、企業体質そのものを強化していくのです。採用とは、生き物のように変化し続ける会社のエンジンです。

③採用市場を知ることから始めよう

 最初に必要なのは、採用市場を正しく理解することです。東京都の有効求人倍率は1.76倍を超えており、バブル期(1.46倍)を上回る過熱ぶりです。現在はIT業界や人材紹介業など、新興業種が人気を集めており、製造業を取り巻く環境はますます厳しくなっています。

 また、地方の製造業では採用単価が300万円〜500万円に達するケースも珍しくありません。それでも人が採れないという声が聞かれる現状は非常に深刻です。

④本当に必要な人材を明確にする

 採用活動で大切なのは「母集団を増やす」ことではありません。むしろ、採用人数が1人であれば応募も1人でいい。その1人が100%自社にフィットする人材であれば、それが理想です。

 そのためには「誰に入社してほしいのか」を明確にし、その人にだけ刺さる情報発信が必要です。漠然とした「アットホームな職場です」などの表現は不要で、仕事の魅力や働きがいを具体的に伝えることが重要です。

⑤自社の魅力に自信を持つ

 社長や採用担当者は、自社に対して誇りと自信を持つことが大切です。求人広告の文面や会社説明会での話しぶりから、「この会社はいいな」と思ってもらえるかどうかが決まります。広告がどれだけ良くても、現場の人の言葉に熱がなければ求職者には響きません。

⑥採用は「投資」だと捉える

 採用にはお金がかかります。それを「コスト」として捉えるのではなく、「投資」として考えるべきです。特に求人広告に一度も出稿したことがない企業は、自社の「採用市場での立ち位置」を知るためにも出稿し、反応を分析することが不可欠です。

 当社では、1人あたり25〜30万円という比較的低コストで人材を採用できています。その秘訣は、社長自ら求人原稿を練り上げ、しっかりとターゲットを絞って発信している点にあります。

⑦採用活動を最優先業務に位置付ける

 採用活動は、営業や通常業務よりも優先すべきです。当社では新卒採用において、会社説明会をすべて1対1で実施し、面接もすべて私が同席して2時間ずつ丁寧に向き合っています。それくらいしないと、求職者には自社の魅力は伝わりません。

⑧採用戦略の継続的な改善が重要

 採用は一発勝負ではなく、常にアップデートが必要です。失敗もあるでしょうが、そこから何を学び、どう改善するかが最も重要です。求人原稿の内容、人材像の明確化、面接の仕組みなど、PDCAを回していくことで、採用の精度は確実に高まっていきます。

⑨まとめ

 地方中小企業にとって、今は「背水の陣」で挑むべき採用環境です。しかし、考え方を変え、戦略的に取り組めば、十分に勝てる余地はあります。社長自らが現場に出て、熱意を持って採用に向き合うことが、企業文化を変え、成長へとつながる第一歩となるのです。

 講演中には、具体的に会員企業がエン転職に昨年掲出した採用ページを分析しながら改善点などを指摘。また、エイコー印刷自身の実際の採用活動もモデルケースとし、ページ構築からライティング、具体的な採用フローについてもとても細かく丁寧に説明してくれました。このセクションだけで優に30分以上のボリュームがあり、さらにそれを受けた実践的な質疑応答も白熱したのですが、あいにく情報保護の観点から内実については開示できません。が、とにかく塾の後や大学の講義後のような〝脳が疲れた〟と感じるくらい学びの多い時間となりました。昔取った杵柄ではなく、人材募集企業の第一線の方の話と何らそん色のない「今現在の話」ばかりで、実際めちゃめちゃためになりました。

  エイコー印刷では、ここまでリポートしてきた安部社長の圧倒的な知見とノウハウを全力投下していただける、企業の採用業務サポート事業も請け負っていらっしゃいます。筆者の会社にこそ必要なサービスだと、講演中ずっとヘビメタバンドのオーディエンスくらい、賛意のヘドバン首肯していました。安部社長、どうもありがとうございました!!