3月の勉強会報告
任意団体ヴィープス(木原一裕チェアマン)は3月19日、文京区春日の文京シビックセンターで勉強会を実施しました。
今回のテーマは「変革期に挑む新経営者に聞く」と題したトークセッション。会員企業の中で昨年新社長に就任なさった方が2名いらっしゃいます。そんな新社長に“公開インタビュー”をしましょう、という企画の第二弾となります。 パネリストは、㈱日本ラベルの平山雄太社長と㈱タカノ機械製作所の仁科俊昭社長。それにモデレーター役の事務局を交えた90分間のセッションを、オンライン組も含めて22人が見守りました。

(左が日本ラベルの平山社長、右がタカノ機械製作所の仁科社長)
セッションは〇と×のプレートを挙げ質問へ次々に回答していく一問一答のイントロダクションに次いで①自社紹介と自己紹介②経営者に聞きたい「勝機とバランスシート」③価格改定について④逆質問コーナー「教えて!先輩社長」⑤総括・これから何が起きますか――で構成。
会に先立ち、木原チェアマンが以前にも一度新社長就任が重なったときに実施したプログラムで「経営者としてのビジョンや思いがしっかり聞けて、とてもよい内容だった」と説明。「第二弾もとても楽しみにしています」とあいさつしました。

自社紹介に続いてタカノ機械製作所の仁科社長は、自己紹介の中で大学卒業後から今日まで印刷業界一筋で従事してきたとし、写植機メーカーにデジタル印刷機の販売と紆余曲折を経て2010年に入社したと説明。前職での経験則をもとにタカノ機械製作所にデジタル印刷機販売の新規事業を立ち上げるなどして従事してきたことなどに触れました。ちなみに趣味は、スポーツ観戦に自作の真空管アンプによるレコード鑑賞、あとはテナーサックスだそうです。

一方日本ラベルの平山社長は、同社の前身である平山秀山堂が、日本にシール・ラベルが根づくずっと以前に「値札シール」を製造していたことや、戦時中に郵政省の印刷工場が空襲を受け「民間で唯一切手を刷っていました」など、伝統ある社歴を紹介。次いで自己紹介では、前職で健康食品と化粧品に関する専門誌で記者職に従事していたとの意外な経歴も。「取材から記事作成、編集、営業とすべて手がけており、このころにできたメーカー各位とのつながりが入社後も生きています」と説明しました。

仁科社長はバランスシート分析の設問の中で、樹脂版の販売や製版周辺機器について足元の動きに言及。「現業の各位にとってご承知の通り、樹脂版を売る立場からみても、新版が出づらい状況が続いています」と分析する同氏は、減少を補う存在として「今後は〈フレキソ分野への強化〉と〈デジタル印刷機販売〉、また製版時の〈廃液処理に関わる事業化〉」を勝機に挙げます。
また仁科社長は価格改定に関する事項で「販社の立場でできることは限定的」としつつも「新製品ならば、価格交渉の必要がありません。こうした発表が継続的にできる組織にしていきたい」と胸の内を明かし、売り手と買い手がウィンウィンになる提案を続けたいですねと語りました。

聴講者からの質問で、社長就任を控え専務取締役だった3年間の処し方を問われた平山社長は「皆が同じ方向へ進むためには計画づくりが必要ですが、“ここを狙うのだ”という計画は、数値に基づく根拠があってこそ。さらに、それを発表しても浸透させ社員に意識を持ち続けてもらうには、相互コミュニケーションが不可欠です」と、これに関わる社長就任前からのさまざまな苦労話を吐露。実父である元社長が急逝し、引き継ぎなど何もできないまま走り出す中、自身で調べたり外部の人を頼ったりと「手探りで駆け回った3年間でした」。今だ勉強中の身ですと打ち明けました。 またバランスシート分析では「どの業界に」「何を売り」「なぜ評価されるのか」を表にまとめて可視化。自社の強みや利益の原資は何なのかを正確に掌握していく、平山社長ならではの手法を披露しました。

終わりに総括として、両社長は次のように決意を語りました。
今日も昼間に新しい組織図を描いていたのですが、あらためて思ったのが「今までやってきたことをそのまま続けていては駄目だろうな」ということでした。
何をすべきか各人が考えなければなりませんが、そんな従業員をサポートするのが経営者のつとめ。何ができるのかをこれからじっくり考えたいと思います。
加えて社員の年齢が高くなっているため、新たなメンバーを迎えたい。ベテランぞろいゆえ、社内の知見や経験則が非常に乱雑になっています。それを整理整頓し、会社の枠組みを再構築したうえで次の世代に渡したいと思っています。
これらは15年この会社に勤め、これじゃいけないなとは思いつつもついぞ直せなかった部分。今回こういう立場になり、率先して実践しなければならない状況にもなりました。傍目で皆さんに「タカノ機械は変わったな」と思っていただけるようにしていきたいと考えています。
最後に社名の変更。社内にプロジェクトチームも設け、2025年度中に新社名での再出発を考えています。間もなく創業50年を迎える当社にとって、社名変更は次の50年に向かうための決意表明です。
㈱タカノ機械製作所 仁科俊昭社長

当社もこれまで安定した顧客や直接取引の多さにかなり助けられてきました。しかし仁科社長が仰る通り、当社もこれまでと同じ事業だけ続けていてはこの先非常に厳しい。新しい何かが必要であると実感しています。
今期の数字を見ていると、既存事業の早急な最適化が望まれます。例えば、資材を買っても廃棄してしまうものが結構多く、資材が高騰する中で管理の仕組みをもっとしっかりしなければと痛感します。また営業と製造の業務効率化についても課題が山積。管理手法の再構築が必要になっています。
このほか、シール印刷ではない新規事業の立ち上げも目標の一つとしています。具体的には、前述の課題解決の施策として社内の生産工程をDX化していきたい考えです。資材管理などはまさにDX化を実現したい部分。今後ものづくりをしていく上で工程をデジタル化していくことは非常に重要だと捉えています。まずは自社でDX化を果たし、その構築した仕組みをパッケージ化して、同業各位が製造現場のDXを実現していけるようなソリューションを提供していきたいと考えています。
社内をDX化していくには、ブラックボックス化している部分もどんどん紐解いていかなければなりません。そこを聖域なく実践して、根拠ある目標や数字に裏付けされた計画を社員と共有しながら、新しい事業をチャレンジし続ける。そんな社長でいたいなと思っています。
㈱日本ラベル 平山雄太社長
