10月の勉強会報告
Viepsは10月19日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を実施しました。
今回のテーマは、特色印刷が多いシール・ラベル業界に有効な調色管理ソリューション「CCM(コンピューター・カラー・マッチング)」について。CCMシステムを開発する倉敷紡績(クラボウ)、これを販売するT&K TOKA、またインキ自動計量装置メーカーである芝橋の3者が講演を行いました。
最初に、T&K TOKAの神谷紀秀・営業本部課長代理が登場。
同社インキのラインアップをタイプ別に概説した神谷氏は、ラベル印刷向け「UV161」を例に、直近の平均月産データを表示。
「以前なら通常中1日の納期をいただいていましたが、最近では3時間といった超短納期の時代です」と説明する同氏は、ロット数や生産量に対する特練り件数と量別の割合、直近3年の推移を数値で確認。シール・ラベル分野の特色印刷の多さを実証しました。
次に同分野の特徴として▽プロセス4色が少ない▽特色が多い▽ロットが細かい▽リピートが多い▽基材の種類が多い▽後加工が多い▽納期の短期化、といった事情を抽出。これが起因となり生じる問題として「調色の回数の多さ」「発注の多さ」「インキの在庫増加」「調色に伴う機械停止」を指摘しました。
これを受けて、CCMの役割と効果に言及した神谷氏は、「本来500gで足りる特色インキを、メーカーに最小単位の1kg頼む。その後リピートもなく、使われずに残った無数のインキ缶が棚を占拠する――多くのラベル印刷会社でこういった光景に出会います。CCMを運用することで、インキを必要なときに必要な分だけ作って無駄な在庫もなくなります。そして、自社の棚に並ぶインキ缶を『色を作るためのインキ』にすることができるでしょう」と提案。
終わりに神谷氏は「特練りのすみ分け」を唱え、次のようにまとめました。
「CCMを運用することで、新規案件については社内で迅速な初回校正をしていただけます。その後リピートオーダーがきた際、比較的量が多くなければデータに基づき社内で特色をお作りいただき、UV161以外の特殊インキやまとまった量ならば当社やインキメーカーへ。こうしてメーカーに頼むものと自社でこなせるものを、CCMを運用してすみ分けを図っていただくことによって、短時間で無駄なく効率的に仕事がこなせます。印刷会社、インキメーカー双方にとって、メリットが生まれるでしょう」
株式会社T&K TOKA
東京都板橋区泉町20-4
☎03-3960-5103
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続いて、クラボウの峰田裕嘉・エレクトロニクス事業部係長が登場して「調色支援システムによる品質管理と分光光度計による色管理」と題した講演を実施。色を数値管理する際の“数字のひとり歩き”を防ぐため、「明度」「彩度」「色相」の基礎知識や色彩学の専門知識を、明快な説明と図解・グラフを用いて、ていねいに解説しました。
この中で「色の見え方は諸条件によって左右されます」と「色の認識」について説明した同氏は、
・光源の違い
→照明光源の違いで同じ色が違って見える
・方向の違い
→光の当たる方向や見る方向が変わると見え方が変わる
・大きさ(面積)の違い
→面積の大きい色は、小さい色に比べて明るく鮮やかに見えやすい
・背景の違い
→色の対比効果
・観察者の違い
→個人差や加齢による変化
とまとめました。また、分光光度計と色差計による「調色支援システム」を運用した「色の数値化」について言及。印刷におけるトラブルについて同氏は、
・メタメリズム(等色条件)の発生
→太陽光下と室内照明では、等しく見えた色が異なってくる。また、調色した
インキの組み合わせや種類が変わっても異なってくる
・経時変化
→見本となるサンプルが変色することによって発生
・前回見本の色管理
→前回見本を参考に調色、次も前回見本、次も前回見本…を繰り返すと、最初の色から離れていく
といった症状を挙げました。これらは調色支援システムですべて解決できるほか「生産拠点が離れていても、印刷品質の均一化が図れる」と述べました。
引き続き峰田氏は、クラボウのCCMシステム「AUCOLOR」シリーズを紹介。このうち、分光光度計、ソフトウエア、データベースと従来機能から最低限必要なものだけに絞って構成したエントリーモデル「同OF7 ウルトラライト」をラベル業界に向けPRしました。
ウルトラライトは、CCM導入時のネックとなっていたイニシャルコストを減らすことに主眼を置いたもので、月々3万円のランニングコストでCCMを使用できる「使用料払い方式」を採用しています(初期費用は別途)。
CCMの特徴と導入効果について「生産工程の効率化」「コストダウン」「品質の安定・向上」の3点を挙げ、それぞれ次の通り述べました。
▽生産工程の効率化
・調色作業を外段取り化→本機稼働率向上
「お金を生む印刷機の稼働率をいかに上げるか」
・調色時間の短縮→処理件数の増大
・クイックレスポンス→インキまちをなくす
「必要になってから作るのではなく、あらかじめ短時間で用意しておく」
▽コストダウン
・デッドストックの圧縮
・色出しで浪費する損紙が減らせ原反の節約
・熟練者に依存しない
▽色品質の安定・向上
・個人差の工場
・メタメリズムの解消
・データベース化によるリピート色の安定
峰田氏は「自社でインキを練っている企業の印刷機の平均稼働率は、大体30%程度と言われています。CCMを導入して稼働中の印刷機の後ろに次のインキと版をセットするある企業は、50%から60%の稼働率を実現。つまりCCMによって『印刷機をもう1台導入した』ことと同等の効果を発揮していることを示しています」と有効性を訴えました。
最後に同氏は、CCMの新たな活用事例を紹介して、自社の調色支援ソリューションをPRしました。
「化粧品関係などデザインがシビアな案件では、初回の色合わせのときにデザイナーやお客さんが立ち会い、その間本機を抑えてしまうといったケースもあります。CCMを運用することで、まず1色ベースとなる色が決定したら、そこから『もう少し明るく』『前段階の色に戻して透明感を加えて』といった要望にも、色空間上で明度・彩度・色相を数値で調整管理することで、要望の色を逐次お客さんに出すことが可能となります。このように、テスターで済ませられると本機を止めることもなくなり、デザイナーが欲しがる色、お客さんが求めるゴールまで手早く確実に導くことができるでしょう」
倉敷紡績株式会社(クラボウ) エレクトロニクス事業部
東京都中央区日本橋本町2-7-1
☎03-3639-7088
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最後に、芝橋の渡辺大社長が登場。
同社はCCMシステムと接続可能な、インキ自動計量装置「レインボー」を販売。同社独自のインキ吐出ガン(特許)によって、インキの糸引きが生じることなく正確にカットし、計量精度は±0.05(機種による)を実現しています。
『あなたの傍(はた)を楽(らく)にする、「はたらく」機械を提供します』を掲げる渡辺氏は「CCMが技術、経験、知識といったスキルを支援する存在。これに対して、計量装置は道具です。道具は、使い手が気持ちよく、効率よく使用できることが重要。1日に数10点扱う企業、インキの無駄な廃棄を無くしたい企業に、当社の機械は効果的に運用していただけるはずです。企業の方針や要望に沿って機械をご提案し、目的の実現を支援する道具をご提案いたします」と述べ、製品を紹介しました。
株式会社芝橋
東京都大田区西糀谷2-7-15
☎03-3744-6551