10月の勉強会報告

Viepsは10月15日、東京・銀座の中小企業会館で勉強会を行いました。
講師を務めたのは、これまで数度教壇に立つ特定社会保険労務士でLEC専任講師の澤井清治氏。会社経営者が集まるViepsの頼れる相談役です。今回は「労使関係」と「60歳以降の働き方について」をテーマに講演を行い、14人が出席しました。

はじめに労使関係に言及した澤井氏は、自身がこれまで担当してきた係争事例など踏まえて、モデルケースをいくつか紹介しました。

【事例①】『未払い残業その1・元社員からの請求』

退職した従業員から未払いになっている残業手当の支払いの請求書が届いた。当社は10人未満の商業で家庭的な会社であり、就業規則もなく就業時間と私的な時間の区別がはっきりしていていない時間帯があり、社員は就業後にお茶を飲んで休憩した上でタイムカードを刻印している場合がほとんど。応じる必要はあるのか。
退職者からは、タイムカードの時間から途中休憩の1時間を差し引いた時間をすべて労働時間として計算した額を請求されていますが、全額支払う必要はあるか。また支払わない場合は労働基準監督署に訴えると書いてあるが、その場合は何か罰則を受けるのか。
▽相談のポイント
①退職者からの未払いと思われる時間外手当の請求に応じるべきか
②タイムカードの刻印通りに計算した時間外手当を支払う必要があるか
③労働基準監督署に売った選れた場合、どうなるのか

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【事例②】『解雇、団体交渉の申し入れ』

専門職として採用したX氏について、3月間の試用期間を設定していたが、当社が求めているスキルのレベルに達していないことが判明したため、1月経過した時点で解雇予告手当を支払った上で即時解雇した。
ところが、その後個人加入のユニオンからX氏の解雇について団体交渉の申し入れがあった。どう対処すればよいか。また、労働委員会のあっせんも視野に入れているとのことだが、その場合はどうなるのか。
▽相談のポイント
①解雇の有効性
②職種限定採用の場合の解雇
③団体交渉について
④都道府県労働委員会のあっせん

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【事例③】『未払い残業その2、元管理職からの時間外手当の請求』

先日、突然労働基準監督署から呼び出し状が届いた。内容は、少し前に解雇した3名の元社員からの訴えで、違法に時間外手当が支給されていないとのこと。
3名は今の事業部に6月前に配置転換となったが、その後当該事業部にいる間について合計で300万円以上の未払いの時間外手当が発生しているとのこと。
3名のうち2名は管理職で、1名は一般社員。全員年俸制適用者。解雇の理由は、会社の業績不調による整理解雇。
今後の対応はどうすればよいか。また、当社は未払いの時間外手当を支払う必要はあるのか。
▽相談のポイント
①初期の対応
②労働基準法の労働時間、休憩、休日の適用除外者に該当した場合、管理職である2名が労働基準法の監督・管理者に該当するか
③具体的な対処方法
④整理解雇の4要件

いずれも結果が気になってしまうような内容です。とかく難解になりがちな判例を、澤井氏は要点をまとめ、かみ砕いて簡潔に説明。労使に関わる係争事例を追体験しました。

次いで澤井氏は「年金を受給しながら働き続けたいと考える従業員と、給与コストを抑えて定年に達した従業員を継続雇用したいと希望する経営者。双方にとって最良な選択とは何でしょうか」と会員らに提起。
第2部は講演のテーマを▽60代前半からの在職老齢年金▽65歳以降の在職老齢年金▽雇用保険の基本手当との選択▽高年齢雇用継続給付金▽60歳からの最適賃金設計――、といった5つの項目に分類します。その中で同氏は、「在職老齢年金制度」の概要説明をはじめ「65歳までの在職老齢年金の計算式」「60歳で定年退職した場合における、雇用保険の基本手当の日額」「高年齢雇用継続給付金」の定義と仕組みなどについて事例問題を交えながら、より実践的な形で体得していきました。
制度を有効に利用した雇用モデルを詳らかにする同氏から、会員らは経営者と従業員がそれぞれ合理的かつ最適な選択を行うための知識を習得し、具体的な手段を学んでいました。

質疑応答では、自社の事例を引き合いに出しながら「こういうケースには、どう対処するのが適当でしょうか」といった、真剣で切実な相談が相次いでいました。