6月の勉強会報告

Viepsは6月17日、中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催しました。今回は、1年超振りの会員企業による自社紹介を実施しました。

『所有から共有へ』の理念を掲げ、会員企業同士の水平協業を目指すVieps。近年は会員数を着実に増やしています。今回実施した自社紹介は、協業を実現する会員同士のさらなる相互理解を促進する目的以外にも、プレゼンテーションを通じて自社の特長を分析し、それを言葉やビジュアルなどと共に他者へ説明するという、プロモーションとプレゼンテーションのトレーニングという目的も兼ねて企画されています。 今年初となった自社紹介は、新規加入の2社を含めた4社によるプレゼンが行われました。

㈱カナエ(長野県長野市東和田)は、包装用品の卸販売会社として1971年に創業。80年にシール・ラベル印刷に着手したということです。志川孝之社長は、県内東西南北でそれぞれ主たる産業が異なる地理的特性を紹介しました。

「当社のある長野は北信に位置し、工業系が少ない代わりに農作物の栽培をはじめ味噌や漬け物、ジャムなど食品加工業のほか、善光寺や志賀高原といった観光業が産業のメーン。農作物に使用する包装資材の供給、食品ラベルの製造という仕事が多く、包装用の透明の袋と一緒にラベルも納める、といった受注形態を強みとしています」
「長野は東海、関東、北陸・新潟と隣接する土地柄、全方位から攻め込まれやすい。県外からのコンペティターが多く、価格競争は厳しいです」
このほか、印刷機やプリプレス・ポストプレスに関わる設備状況、印刷物の内容、自社の商圏と県内の景況感などを紹介。さらに趣味はバイク、子供は5人などなど、志川社長の人となりが伝わるパーソナルな一面も披露していました。

□■□

㈲清宮シール(群馬県太田市)は、ラベルの印刷のほか、印刷機ののり溜まりを解消する防止液「グルーバリア」と、ノンシリコーンの静電気帯電防止液「静電バリア」の開発・販売会社としてその名を広く知られる企業。清宮誠社長がそれぞれ製品紹介を行いました。

同社では2009年にケミカル商品の開発、製造、販売を開始。有機溶剤や油を極力使用しない水溶性で、安心安全を確保しています。主に水溶性クリーナーや水溶性コーティング剤を得意としており、各業界に特化した調合を施しOEM供給も行っているそうです。
「グルーバリア点液タイプ」は、のり溜まりができやすい部分に塗布して乾かすだけ。清宮社長が効用を紹介します。

  • 印刷機の紙ほぐし機、紙通し部、紙おさえ部、紙幅調整ガイド部、送りドラム、ゴムコロ、カス上げ棒、スリット刃などにできるのり溜まり抑制に
  • 刃型ののり溜まり、のり戻り抑制に
  • 断裁刃、スリット刃、その他作業に使用するカッターやハサミに塗布した部分に「同スプレータイプ」は、ロール原紙の側面に吹きかけるのみという手軽さ。これによりベタつきを抑え、のり溜まりの発生が抑えられます。
    また、ノンアルコール・ノンシリコーンの静電バリアは、機械の静電気が帯電しやすい個所に直接数滴分を塗布して使用。
  • 印刷作業中の摩擦帯電やラミネート加工中の剥離帯電を予防
  • 静電気による印刷物へのホコリやゴミの付着を防止
  • 揃えや巻き締め作業の妨げ、静電気によるクラッチの誤作動を防止

こういった効果を得ることができます。

同社ケミカル商品の利点について清宮社長は①人体と環境への負荷がない②機械や道具に悪影響を与えない③紙やフィルムなどの材料を変化させない④次工程への配慮⑤エンドユーザーへの配慮、と要約。また印刷業以外にも他業種で使用されている実例を紹介しました。
「塗装前に静電バリアを塗布すれば、チリやホコリの付着を防いで不良率が低下したり、ディスプレイで使用するドライフラワーの花びらへのホコリの付着を防いだりといった使用例も。アルコール不使用なので、生花に使用することもできます。グルーバリアは、ハムや製パン会社のシール剥離機やラベラー、段ボールメーカーの型抜・断裁機など、他業種で幅広く使用されています」
最後に、塗布した個所に特殊皮膜層を形成して再剥離を可能にする新製品「シールスペース」を紹介。段ボールにこれを塗布して、その上にシールを貼付したサンプルを回覧して、効果を訴えました。

□■□

『変わったラベル・ステッカー作れます』とPRするのは、㈱デカプラス(東京都板橋区)。デカールに付加価値をプラスして提供したい、という思いを社名に掲げる柳井仁志社長は「個人・法人を問わず、印刷をどこに頼めばよいのか分からないという方の手助けをしていきたいと思い、小規模ながら一貫性のあるものづくりを心がけています」と自社を紹介しました。

デカプラスが手がけるのは、デザイン制作やデータ作成をはじめ、携帯ゲーム機やラジオコントロールカーのスキンシール、商品のモック、可変ラベル、車体ラッピングや屋外広告などなど。メディアを選ばないUVインクジェット、納期の早さとコストパフォーマンスに優れる溶剤インクジェット、屋外用とで可変情報にも優れるレーザープリンタ、これら印刷物への抜き加工処理のほかスチレンボードを使用した立体POPなどサイズの大きな造形物もこなすカッティングプロッタと、各種プリンタを駆使した多岐に渡る自社ビジネスをサンプル配布やスライド写真を通じて紹介しました。中でも、バイクや自動車のラッピングでイメージチェンジを施した事例の写真を披露しながら「プリント、カット、施工まですべて任されることが多い」と述べていました。
終わりには「皆さんが一番知りたいのは当社の仕事内容というより、インクジェットはどのくらいのコストがかかるものなのか、という部分だろうと思って」と、柳井社長は▽溶剤塩ビ▽UV CMYK▽UV CMYK白、という条件のもと「高速」「標準」「高品質」での平米あたりのインクコストと、1時間当たりの印刷量を詳らかにすることで、相互理解の促進に寄与する情報の公開を率先して行いました。

□■□

最後に登場した㈱タック印刷(東京都墨田区)の高田朋幸社長は「毎年何か新しいことにチャレンジする」と語ります。

その中で昨年、欧州の印刷団体FINATに入会したことを報告しました。
「社内から挙がった『ラベルコンテストにエントリーする機会が欲しいという声や、私自身ドイツでの留学経験がある縁などから、欧州の印刷団体に入会した。FINATでは毎年春にラベルコンテストを実施しており、今年は残念ながら最終選考に残りませんでした。来年もまたチャレンジするので、ノミネートされるように頑張りたい。いつかFINAT代表として日本の代表作品と世界の舞台で競い合える日が来れば」と目標を語りました。
このほかにも、タック印刷の創業時からこれまでの歴史と変遷を説明しながら、近年同社が確立した、レーザーマーカーでナンバリングやバーコード、QRコードをはじめ、線幅0.1mmという照射により微細なデザインを再現する加工技術を紹介。消し銀のアルミ蒸着にレーザー加工を施したという配布したサンプルは、蒸着層だけが削られて表面はツルツルのまま。インクを使用しない技術は改ざん不能、耐候性・耐擦過性・耐薬品性に優れるといった優位性を説きました。

◇◇◇

終了後の懇親会の席でもプレゼンターをつかまえては質問や相談をする姿が見られるなど、今回の自社紹介も会員相互の理解を後押しする有効な機会となったようです。