7月の勉強会報告
任意団体Viepsは7月17日、中央区銀座の中小企業会館で勉強会を行いました。
今回は5月に続く、(独)東京都立産業技術研究センター・薬師寺千尋上席研究員によるプログラム「好かれる企業か強い企業か」の第2弾。初となったワークショップ形式の参画型勉強会に対する会員の反響の大きさは予想以上で、当初予定を前倒しする形で早くも再登場となりました。
ワークショップに臨む前段として、まずは座学から。「仕事との向き合い方」の項では、“自分が難得してやる”仕事と“人に命令されてやる”仕事の2つに大別した場合、「本人の納得度」(意欲・モチベーション)の高低、「仕事の要求度」(高度さ・困難さ)の高低という変動的要素により、人は仕事にどう臨みがちであるかをチャート図で確認しました。それを確認しながら、“本人のやりがいを引き出すためには”“リーダーに求められるものは”といった要素や条件について検証しました。
続いて同氏は、発想技法の基本の一つである「ブレインストーミング法」を紹介。
これは1930年代に米国のアレックス・オズボーン氏が考案した方策で、拡散的に多数のアイデアを出せるのが特徴です。原則となる4つのルールがあり、
- 批判厳禁……決して他人のアイデアを批判しない
- 自由奔放……上下関係・役職・部署のほか奇抜であることを意識しない
- 質より量……良質なものを求める必要はない
- 相乗りOK……他人のアイデアに準拠した連想や組み合わせを歓迎
といったことが求められます。
また「KJ法」は1960年代、文化人類学者川喜田二郎氏が考案した日本でも馴染みのある知的技術。観察を情報化して関係性を引き出すことを目的とした同技法は、TQC(Total Quality Control=統合品質管理)運動で多用されたほか、問題の発見や不良品の改良など、製造現場、技術開発の現場で活用されてきました。
これら2つの発想技法の基本を習得した後は、4班に分かれてグループワークです。
最初のテーマは、プログラムのテーマでもある『好かれる企業とは』。付せんを使用して、それぞれが考える好かれる企業の条件を、自由に書いてはテーブル上に披露していきます。プリンターにメーカー、経営者にオペレーターと、立場や視点が異なると出てくる言葉も変わってくるもの。「ああ、なるほどね」「分かる分かる」と、言葉の解釈や複眼的な視点を知り、お互い創発し合いながらどんどん筆が進みます。
各々が好き好きに挙げてきたものを、次の工程では机上の模造紙の上で似たテイストのもの同士でグループ化を図り、相談しながら意見を集約していきます。さらにそのグループにタイトル(表札)をつけ、さらに追加できる要素も引き続きつのりました。
これと同じフローを踏襲しながら、今度は『好かれるリーダーとは』を論じ合います。自分のコトをそのまま書けばいいんだよ、と人にアドバイスする部員も、なぜか自身の筆は重たい様子です。
終了後は、模造紙を広げつつ発表会を実施。自分たちが考えた好かれる企業、強い企業のさまざまなタイトルを披露し合いました。
各班が発表したタイトルをホワイトボートに列記していた薬師寺氏は「▽人▽金▽情報▽技術▽経営理念――これらがきちんとそろうのが『強い会社』。そして▽接客▽コミュニケーション▽社会性▽明るい▽柔軟――こういったものがたっぷりあるのが『好かれる会社』を形成する要素と言えるのでは」と要約しました。
2本目のワークで実施したのは『ストーリー法』。さまざまなプラン展開をまとめる技法で広く用いられています。
進め方は、グループで1つイベントを主催すると仮定します。それを実施していく上で必要なコトやモノ、要素やアイデアを付せんに記入して披露していきます。一定時間が経過したら、模造紙上を3等分して『並行作業・準備・前提』『主な行動の流れ』『並行作業・結果・内容』に区分。付せんを各パートに即して振り分けていく中で取捨選択を行い、グループで囲み、小タイトルを付けるなどイベントの成功を実現するためのフローを整理して、一つの事業を完成させるストーリーを発表しました。
4班が掲げたのは「Vieps大運動会」「Vieps納涼会」「Vieps研修旅行」「Vieps盆踊り大会」。どれも荒唐無稽なお題ですが、それぞれが参加者を集めるための知恵、参加者の満足を高めるアイデア、運営資金を集める方策、次回開催に結びつける秘訣などを、終始笑い声に包まれながらユニークかつ真剣に論じ合いました。発表後にはどのテーブルのイベントに参加してみたいと感じたかを挙手で決定しました。
総括として薬師寺氏は「日本人は〝技術に勝って事業で負ける〟嫌いがある」と語り、今回のワークを通じて〝不要な案を切る難しさ〟の体得について言及しました。
「日本人は、ダメなものはダメ、と切り捨てるのを苦手とする人種だと言われます。今回のワークの中でも、何となくテーマにそぐわない付せんを最後まで取っておいて『何とかなるのでは』『どこかで活かせるのでは』と残ったままだった班もあるのでは」
「ビジネスにおいても、どこかに活かせるのではとずるずる引きずってしまったり、それが遅れをとる原因となって他社に先を越されるという図式が対世界でも見られます。ストーリーを成功させるために不要な、ものを見極め、容赦なく切り落とすことの重要性を感じるための練習となれば」
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なお今回、Viepsは4名の見学者を受け入れ、全員グループセッションに参加。早速会員らに混じってさかんに意見を述べ、ワークショップを体感していらっしゃいました。今後も都産技研を招いての勉強会を予定しています。ご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。