4月の勉強会報告

任意団体Viepsは4月16日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を行いました。
「現場で役立つ印刷技術」と銘打ち、今回は久々となる現場に向けた実技編が企画されました。それもあって会場には経営者に同行した現場担当者の顔もちらほら。いつもとは違うフレッシュな顔ぶれが会場を埋め、期待が高まります。

講師を務めるのは、言わずと知れた技術の大家、㈲啓佑社の山下庫太社長――なのですが、当日は急な仕事の都合で到着が遅れるとの一報が。勉強会が始まるのに講師が間に合わない。さてどうしたものかと会場がザワつきます。

こうして急きょ30分以上もの時間が空いたのですが、そこは百戦錬磨がそろうvieps。どう繋ごうかと筆者がやきもきしていると、宍戸チェアマンが「何かプレゼンしたい人がいればぜひ」と会員に水を向けます。機を見て敏、窮するチェアマンをサポートすべく、急な提案でしたが講師到着まで場を繋ごうと3者が名乗りを上げました。

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最初に登壇したのは、㈱フナミズ刃型製版の木原一裕社長です。ちょうど届いたばかりのラベル新聞4月15日号を手に、1面トップを飾ったニュース「印刷用亜鉛版の提供拡大」の事業について解説を行いました。

印刷用亜鉛版を供給してきたメーカーが生産を中止したことで、製版会社を含むラベル業界は①海外製の亜鉛版を使用する②亜鉛版の代替素材を探す③亜鉛版を捨てる、という選択に迫られていました。①の場合、海外品は厚みや使用する薬品など性質が異なるため、従来と同じ処理工程を経ても同じように再現できません。②も同様、マグネシウム版もありますが堅さも違えば勝手も異なり、一からの技術構築になります。そして③ですが、実際製版会社の中には店を閉めたところもあるようです。
そこをフナミズ刃型製版は、自社で海外製品を輸入してきて、自社で一旦レジストを剥がし、自ら見つけてきたレジストを再加工して「フナミズ刃型仕様」の亜鉛版を作ることに成功しました。長年業界で培った技術を絶やさないため、亜鉛版がなくて困っているラベル印刷会社を救うため、製造設備まで新たに増強して本腰を入れサポートに臨む木原社長のプレゼンに耳を傾けました。

続いて登場したのは、㈲ラベルアンドメイクの林泉社長。奇しくも直前の木原社長同様、新聞の1面に掲載された印刷加工技術について説明しました。

ポッティングを得意とする同社は今回、樹脂の上にUVニスでごく微細な凹凸を等間隔に形成し、印刷を立体的に表現する加工技術を確立。
まずIJP印刷を行う際、立体効果を演出したい文字や絵柄を、意図的に通常時よりドットを大きく(粗く)印字します。その後ポッティングを施し、乾燥後にUVニスを使用して、IJPでポッティングの上へ針先でつついたくらいの極めて小さな〝凸〟を形成。これがマイクロレンズのような役割を果たし、粗く設定したドットとの間でモアレのような像のズレが生じることで、絵柄をレンチキュラーのように立体化させるというものです。
意図的にモアレを引き起こすために、大きめドットの直径もマイクロレンズもそれぞれしっかり大きさは計算されているという話。それを精緻な印刷と加工技術で再現することで、摩訶不思議な現象を引き起こしています。サンプルを回覧して、技術を紹介しました。

最後に登場したのは、㈱サカヱ彫巧社の舛重聖長社長。前週まで中国を訪れていたという同氏から、ちょうど開催されていた展示会「プリントチャイナ」で見た最新技術の紹介や動向が報告されました。

今年の同展、開催規模は実に「東京ビッグサイト8個分だった」と同氏。規模だけで言えば、すでに世界最大の「drupa」に匹敵するほどに成長したと報告します。
サカヱ彫巧社のメーン顧客は紙器パッケージ分野。「『刃型を用いず抜きましょう』『小ロット多品種に対応しましょう』という提案が印象に残った」と、シール・ラベルとも重なる同分野のトレンドを説きます。この中から、押し罫用のスジを自動生成する機構とレーザーダイカッターを備えた、デジタル後加工機の存在を紹介。「3年前、サンプルの折り罫を曲げてみるとかなりズレが生じていたが、今回はそれがほぼなくなっていた。一緒に視察していた木型屋の人は『そのうち仕事がなくなってしまいそうだ』と感想を漏らしていましたが、その加工機は価格が1億5,000万ほどとまだ手が届かない上、抜きの回転数も異なる。それでも、世界を見回しても〝資材を使わずオンデマンドで印刷してオンデマンドで抜く〟傾向にあるのは確か」と述べました。
またラベル分野に関しては「シカゴやほかの海外の展示会でも見受けられるように、デジタル印刷後にそのままレーザーダイカッターで抜き加工を施すという、印刷と加工が一体となったデジタルソリューションが目立った」と説明。
終わりに「日本が何十年か前に行っていたことを急ピッチで実践しているのが中国。勢いのあるマーケットには、当然出展企業やトレンド、人が集まるもの。そんな中国の展示会、余裕があれば視察してみるとよいのでは」と結びました。

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そしてお待ちかね、真打ちが到着。すぐに持参したDVDをセットし、映像を視聴しながら色に関する基礎知識を学んだ後、平圧機や凸版間欠機を若いオペレーターが動かし山下社長が技術指導する、というシーンに移りました。

「シビアな基材条件でいかに共上がりを防いで巻き上げるか」「グラデーションの出し方」「雄型の彫り方」などなど、同氏のオリジナリティーあふれる便利技や解決手法、技術論を一緒に学びました。

真打ちですが、やんごとない大人の事情で詳細を載せることができません。フォトリポートとわずかなコメントのみでご容赦ください。限られた時間内で双方集中して解説と質疑応答を繰り広げ、その話題からさらに新たな質問に派生するなどインタラクティブなやりとりが展開され、いつにも増して活発な技術勉強会となりました。