3月の勉強会報告
任意団体Viepsは3月15日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催しました。
今回講師を務めたのは、(一社)ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会。「“分かりやすさ”を科学する~UCDはじめの一歩」を演題に、三村一夫UCDA事務局長を迎えて同協会が提唱するUCDについて解説しました。
同氏ははじめに、UCDAの組織を「『情報品質の向上』を目的に、印刷物や情報端末の画面デザインを評価、認証する活動を通じ『ユニバーサルコミュニケーションデザイン(UCD)』を提唱する機関です」と説明。
「生保や損保の契約申込書、自治体の通知、銀行の帳票など“まったく読む気がしない文字だらけの書面”を評価分析して読みやすくしよう、を起点に生まれた組織。『見やすく、わかりやすく、伝わりやすく』のための評価・分析・改善の多彩な科学的ソリューションを持つほか、“科学的根拠のもと”“第三者認証の審査を経て開発された“UDフォント『みんなの文字』を提供しています」と説明しました。みんなの文字は、2015年に東京都が発行した防災用のハンドブック「東京防災」で使用されたそうです。
情報品質とは何か、を説明する象徴的な事例がありました。プレゼンのスライドの中で三村氏は、某コンビニエンスストアの店頭で見かけた光景としてセルフ式の「コンビニコーヒー」装置の写真を紹介しました。
一方は通常のものに対して、もう一方は▽ホットこちら・アイスこちら▽手順をよくお読みください▽小さい方がR▽セルフサービスでお願いします▽押し間違えても一切責任を負いません▽サイズ違いは別途料金をいただきます、などなど、テープライターによる注意書きで埋め尽くされたもの。ペタペタと20枚を超えようかという勢いで表示テープに埋め尽くされたコーヒー抽出機の姿を見て、会員からやり過ぎだろうと笑いが起きます。
三村氏は「間違ってしまう人、レジに聞きにくる人が多くて、購入者の助けになればと考えたオーナーの配慮なのでしょう」と示唆。この上で「このように、本当に大切なこと、読んでもらいたいことが相手に伝わっていない。われわれは、情報コミュニケーションの〝分かりにくさ〟の要因を特定して、それを定量化するために『分かりやすさの基準づくりを行う』ことを目的として誕生しました」と設立趣旨やUCDの目的を訴えます。
「情報品質を向上させることで、写真の事例言えばレジに聞きにこなくなるので、運営の作業効率が向上する。ほかにも、説明書が読みやすくなれば誤用による事故が減る根本要因になり、書類の説明が明快で読みやすく書きやすくなれば、申し込み件数も増える」と、三村氏は「UCDA認証」を取得した印刷物の実例や、情報品質の配慮に優れた企業の印刷物を評価する「デザインアワード」などの活動内容を紹介しました。
とかく抽象的な『印刷物の“読みやすさ”とは?』『情報の分かりやすさは何を基準に誰がどう決めるのか?』を、客観的評価と科学的分析で具体的に定量化し示すことができるのがUCD。情報産業に従事するわれわれ印刷人にとって、分かりやすさの根拠、伝わりやすさの具体的手段の一端を知る有効な機会となりました。