7月の勉強会報告

任意団体Vieps(木原一裕チェアマン)は7月21日、文京区春日の文京シビックセンターで月例勉強会を開催しました。

今回は講師に(公社)東京グラフィックサービス工業会所属の㈱イナミツ印刷社長、稲満信祐氏を招へい。「業態進化を経て~業態進化のキーファクターと新旧事業の融合~」を演題に、20人が参加しました。

イナミツ印刷は1970年創業の軽オフと製本を主軸とした企業です。稲満社長は2014年に家業を継ぐために入社しました。

「慢性的な赤字体質が染みついていて資金繰りも厳しく待ったなしの状況でした」と、入社後に同氏はほどなく社内改革を断行。「数十年事業モデルが変わっていない『下請け体質』に『どんぶり勘定・出たとこ勝負・結果オーライの常態化』、そして『人材・経験不足』の3点を赤字体質の要因」と特定し、それぞれに改善のための方策を立案します。

稲満氏は▽古い体質の壊し方(生産・管理)▽具体的な改善活動内容▽人財育成サイクルを回す3つのポイント、など改革の実践策に言及。しかしながら、この途上で「社員による社長解任のクーデターが生じました」と衝撃の告白も。急速な体質改善に伴う負の一側面として、改善の失敗事例とその原因も包み隠さず明示しました。

ずらりと社員が待ち構えていた会議室に一人呼ばれた稲満氏は本当に面食らったそうですが、陳情を聞くうちに心と頭脳は冷静に。仮に社長を失脚したとして、誰が借金を背負うのか。その覚悟が一体どれだけあるのか。もしクーデターが成功したとして、早晩イナミツ印刷は行き詰まるだけではなないか。気に入る・気に入らないでこれだけの事態を秘密裏に企てる社員を抱えていてそれに気づかなかったことに猛省した――等々、あまりにあけすけに話すので一同は固唾をのんでコトの顛末に聞き入ります。

こうしていかに立て直し改革を進めたのかを、実際の売り上げ推移も公開しながら聴講者へ論理的に説明しました。

しかしコロナ禍で事業環境は急変。「コロナ禍をどう生き抜くか」と、新常態をスタンダードとしていく足元の業態進化に触れました。

「売上3割減でも営業利益10%以上の体制づくり」を掲げて①半自動化による生産性向上②事業構造の変革、の2策について解説。

特に②は、一部顧客への値上げ交渉と取引停止の断行に加え「紙と親和性の高いコンテンツの提案による印刷需要の創出」として現在、イナミツ印刷の新規事業となった「マンガ・動画による課題解決」を紹介しました。

上場企業など有名メーカーの採用作品も公開しながら「競合がおらず価格決定権はこちらにある」「実績が次の実績を呼んでいる」と快走中の事業を説明。「検索、深化と両利きの経営は普遍」と総括しました。

終了後、木原チェアマンは「コロナで業績に影響を受けたのは当社も同じ。しかし、稲満社長のように勇気をもって大きな改革ができる人は稀。自分にその覚悟があっただろうかと自問自答しながら講演に聞き惚れていました」と感謝の意を伝えました。

事後に催された懇親会でも、稲満社長の隣に入れ替わり立ち替わり参加者が着座。稲満社長の情熱に感化され心に灯がともった部員らとアツい議論を交わす姿が見られました。