今年2回目の企業視察を実施しました
任意団体Vieps(木原一裕チェアマン)は11月17日、会員企業を訪問する企業視察を実施しました。9月に長野市へ赴いた企業視察に引き続く第二弾企画となります。
今回訪問したのは、木原チェアマンの会社で製版サービスと刃型の製造などを行う㈱フナミズ刃型製版(埼玉県朝霞市栄町)。同社は数年前、ビク型を製造する企業を事業譲受して本社の朝霞工場のほかに板橋工場も構えていますが、今回は前者を見学しました。
はじめに参加者は、本社工場近隣にある市の公民館会議室に集合しました。「ようこそお越しくださいました、気になったことや聞いてみたいことがあれば社員にいろいろ質問してみてください」と木原チェアマンが歓迎のあいさつを述べ、今日のタイムスケジュールを確認。その後19人の参加者を3グループに分けて、同社の「製版」「オンデマンド」「ゼンマイ刃製造」「腐食刃製造」の各部門を順に視察しました。
フロアにCTPイメージャーが複数台並ぶなど本社2Fの一角を占める製版部門では、オペレーターが黙々とデータ作業中。解説担当者が部門の概要に加えて、自身のマッキントッシュ画面を通じて作業内容を紹介してくれました。
クライアントから届いた入稿データに対して「網点が断絶する部分を目立たなく修正する」「グラデーション部分やシャドー部分がより自然な仕上がりになるようボケ足しを修正する」などといった画像編集作業を中心に、パラメーターの調整を施してデータ修正前・修正後を比較したり、「こういうデータが届いたときは要注意」とチェックすべき項目内容や調整の勘所まで丁寧に開示したりと、印刷品質や仕上がりを左右する製版スキルをていねいに披露してくれました。
見学者の「実際の印刷機による仕上がり具合をきちんと把握していないとデータがいじれないのでは」、“こうすればこうなる”ということをどうやって会得していますかという質問に対して、担当者は修正前と修正後のシールの実物を提示。ちゃんと協力会社で印刷を行って影響を確認していることを明らかにして、机上の理論や知識だけでなく現物と照らし合わせることを通じて、製版ノウハウを蓄積していることを示してくれました。
続いて、同じく2Fのオンデマンド部門に移動。稼働中の広幅インクジェットプリンタ(IJP)やプロダクションプリンタを見学しました。普段ラミネート用の基材は何を使いどの厚みで、とか平台のカッティングプロッタではどういうジョブをこなしているのか、などとより具体的な質問が相次ぎます。自社でもIJPを持つ参加者も多い中、特に食いついていたのは治具でした。IJPから排出されたロール紙が落ちないように(という用途に筆者は見えました)装着したというフナミズ刃型製版の特注品に「これは真似したい」「どこにお願いして作ってもらったのか」などと、予想外の部分で参加者が食いついていました。なお同社のオンデマンド事業は、ラベル印刷会社から製版や刃型の発注が届く場面で小ロット印刷の案件をついでに請け負う、といったひとまとめ受注の狙いが奏功し軌道に乗っているようすでした。
最後に1Fへ移動して、一同は抜き型の工程を見学。
腐食刃製造の工程では、マシニング機による切削で刃型の先端を鋭角にしていく作業を間近で見るという貴重な機会を得ました。こうして製造された腐食刃を卓上サイズのシリンダーに装着、粘着紙への試し抜きを確認した後に出荷していますと解説の担当者が説明してくれました。
隣の部屋ではゼンマイ刃を製造。長方形の短辺の片側が半円状になっている、イギリスパンのような形(分かりますか?!)のゼンマイ刃を実際に作ってみるトライアルを行いました。半円形のアールを再現する部分が大変難しく、挑戦した会員はできない・悔しい・難しいと苦戦しながらも「でも何か楽しい」と皆笑顔で挑んでいました。日ごろ強く意識せずに使用している抜き刃ですが、時には高性能なマシンで切削していたり時には人の手で精緻に作り上げられていたりと、シール・ラベルに欠かせない抜き加工を支える人の手が支える技術をあらためて目の当たりにした心地でした。
参加者は「あらためて細かな技巧やノウハウに基づく仕事であることが知れた」「女性も多く活躍している職場だという印象を受けた」といった感想のほかにも「本棚に自動販売機、エアコンの操作パネルなど、社内のあちらこちらにSDGsを全員で取り組み実践している姿勢がうかがえた」などといった感想が聞かれました。
新型コロナウイルス感染症の分類が5類に以降し、アフターコロナになった今年早速再開した2件の企業視察。やはり社外に出て学ぶことの楽しさ、現場から得られる発見を得ることの喜び、そしてその後の懇親会で饒舌に感想を語り合う時間はとても楽しいものだと再認識しました。木原チェアマン、フナミズ刃型製版の社員の方々、どうもありがとうございました!