研修会リポート
任意団体Vieps(木原一裕チェアマン)は9月22日、全国のシール・ラベル印刷会社を視察して交流を図る、恒例の企業視察を実に5年振りに開催しました。
大勢で訪問して万が一何かご迷惑をおかけしてはなりませんから、Viepsのメーン事業である企業視察はコロナ禍で長らく中止を余儀なくされてきました。5月に感染法上の5類に移行し文字通りアフターコロナに社会がシフトしたことを受け、今年は実施したいと執行部で検討を重ねてきて実現しました。
今回われわれを受け入れてくれたのは、長野県の会員企業㈱カナエ(長野市東和田、志川孝之社長)。デジタルラベル印刷機各種からレーザーダイカッターまでそろった、全国的に見ても特徴ある先進設備がそろった生産現場を視察しました。
2018年の四国研修以来となる研修には、関東以外に関西方面からの会員も含め23人が参集。新幹線で長野駅に到着した会員のほか、東京から便乗してきたグループや栃木、遠くは大阪から単身車でたどり着いた会員も。今日への期待の高さがうかがい知れます。
研修会ははじめに、本社工場とは徒歩圏内の別棟にあるカナエ営業本部の会議室で、志川社長による企業紹介から聴講しました。
木原チェアマンは冒頭、志川社長に研修受け入れへの謝意を伝え「これからお見せいただく工場は各位の会社とは異なるはず。いろんなデジタル機が並び、いろんな運用がなされているのだろうと想像します。生産現場をしっかり見学させていただいた後の質疑はもとより、事後の懇親会も含めて久々の研修を心ゆくまで楽しみましょう」とあいさつしました。
遠方からようこそと一堂を歓迎した志川社長は「当社は参加者各位のように首都圏に立地する企業ではなく、特に現場の社員は外部の方と交流する機会がありません。皆さんにとって何かお役立ていただけるようなものが当社にあるだろうかとは思いますが、今回の工場見学を通じてこちらからも皆さんにアドバイスをいただくなど、意義ある勉強の機会としたいです」と述べ拍手が送られた。
はじめに引率役を務める栗原佑次工場長や栗林直也副工場長、佐藤大輔印刷課主任らが自己紹介。次いで、志川社長が包材の販売から始まったカナエの沿革と会社概要、周囲8県と隣接して北信・東信・中信・南信と旧街道とも依拠して発展する長野県の経済圏や文化圏、産業構造の差異といった地政学的特徴をスライドで概説しました。
次いで、志川社長自身の紹介。東京で過ごした大学時代はバンドを組みベースの腕を磨いたことや卒業後は粘着紙メーカーで働いた点、大型バイクを趣味とする大家族のパパとしての一面も持つなど、あらためて志川社長のパーソナリティーも詳らかに。ちなみに志川社長、講談師かのように立て板に水の饒舌さで時に自虐で笑いを誘うなど、ここまでユニークな社長だったのかと筆者は大いに驚きました。執行部、その先のチェアマンにも…。
製造設備の紹介では、同社の特徴でもある豊富なデジタル印刷機群についても言及。ロールとシート、大小合わせて10台におよぶ多種多彩なデジタル印刷機を擁する設備力と製造力がカナエの特徴なのだと推察できます。
この背景について、志川社長は「粘着紙メーカー勤務を経て家業に就きオペレーター経験がなく、自身が印刷機を扱えないことへの恐怖心もありました」と、デジタル化シフトへ至った一因を吐露。続けて「こんな田舎では、オペレーターを募集しても本当に集まりません。コンベンション機を操舵する従来型の印刷加工スキルと有用性はちゃんと認めつつも、属人的な部分も排除していかなければなりません。また、若い方に少しでも仕事に印刷の選択肢を持ってもらうためにも、デジタルシフトを意識した結果でもあります」と、仲間に経営者の胸の内を明かしました。ただ過剰設備気味で社員の視線が痛いのですが、という笑いも忘れず、地方企業が個性を発揮していくための真意や経営戦略を説いてくれました。
その後別棟の工場に移動して生産現場を見学。エプソン、岩崎通信機、コニカミノルタ、ザイコンと充実の設備に会員から驚きの声とため息が漏れ、目をキラッキラ。別室にはフィニッシングの区域があり、プロッターに加えてレーザーダイカッターも。ラベルの全抜き半抜きはもとより、レーザーによる意匠を付与した作品のサンプル事例を興味深く見入っていました。ちなみにカナエの名刺には、レーザーによるごく小さなドット照射でKANAEの文字が。繊細な加工と意匠は、名刺からすでに営業ツールになっています。
他方工場内にはコンベンショナル機も多数。当日は業界団体で技術委員長を務める会員が複数名参加していることもあり、カナエのオペレーターも緊張の面持ち。トラブルシューティングや日々の困りごとに関する質問にメンバーが回答するなど、身振り手振りで意見交換を繰り広げる姿が見られました。
2時間超におよぶ企業視察の後、夕方からは志川社長推薦の市内の焼き肉店で大懇親会。信州牛に舌鼓を打ち、美酒と肴を皆心ゆくまで堪能しました。異文化に触れ、それに対して意見交換したり気づきや学びを得たりした後は、懇親会という空間で仲間と談笑する。やはり企業視察いいなと誰もが実感したことでしょう。志川社長、カナエの社員の皆さま、本当にありがとうございました!!