3月の勉強会報告
任意団体ヴィープス(木原一裕チェアマン)は3月19日、東京都豊島区東池袋の505 SpemoWork池袋3rdで勉強会を開催。オンライン参加者を含め20人が出席しました。
今回のテーマは「原材料高騰・価格改定対応の実例共有」です。毎回の勉強会の内容は運営委員が企画を持ち寄り協議して決めるのですが、まさに足元の情勢に則したタイムリーなコンテンツ。今春も印刷関連資材類の値上げが控える中、〝我慢ではない健全な価格転嫁のあり方を探る〟ことを趣旨と定めました。

ちなみに企画者はプリンター側ではなくサプライヤー側の委員。メーカーサイドは値上げを実施するのですが、それを受けてラベル印刷会社も発注者に対して正当な交渉を実施しましょう・そのための共通理解を確認していこうという狙いでした。
ラベル印刷会社、メーカー、販社が会員として構成するのがヴィープス。それぞれの立場から適正価格を確保する重要性や具体的な価格交渉事例を立場の違いを越えて共有を図る。業界の持続的成長のために適正価格文化を醸成していくことを狙った今回の企画こそ、ヴィープスならではの内容といえます。
冒頭のあいさつの中で、木原チェアマンが自社の実情に言及しました。
「2021年に樹脂版が従来価格から30%値上げしたときに5%前後改定しましたが、その後も2回ほど値上がりしたものの当社は改定していません。今回また樹脂版が値上げするため、利益が得られるよう価格改定の準備を進めています」と自社の台所事情を説明。粘着紙以外にも物流コストや人件費が上昇する中で「いかにお客さまに理解してもらうか、そのためにきちんと交渉ができるようになるか。そのための各位の知見や経験を共有していきましょう」(同)と企画趣旨を説き、まずは自社の実情をつまびらかにすることで続く議論を促しました。

はじめに事務局が、価格改定のポイントを①価格交渉の対応プロセス②説明・交渉方法③値上げ後の関係維持④成功・失敗事例、など体系的に説明。一部だけ抜粋して内容を掲載すると、次のようなイメージでした。
1)社内コスト管理の徹底と判断
ステップ①: 現状分析と内部努力(コストカット)の限界点の見極め
ステップ②: 改定方針の決定(改定率、対象製品、実施時期)
ステップ③: 社内体制の構築と「標準化」
2)顧客向け資料と「ストーリー」構築
▽改定の理由…変動要素を客観的なデータで裏づけ納得感を高める▽改定の目的…単なる値上げではなく「品質・供給の維持」という顧客利益を強調▽標準化…改定レターやプレゼン資料のフォーマットを作成
3)説明の原則とアプローチ
原則①: 早期に、正確に、正直に(実施の3~6ヶ月前を目途に)
原則②: 交渉ではなく「理解と協力の依頼」というスタンス
原則③: 重要顧客へは、責任者(経営層)が直接訪問
・価格改定を、自社の提供価値を再認識してもらう「機会」と捉える
・改定後もヒアリングを継続し、懸念点や不満を早期に察知する
・改定率に見合うサービス水準の維持・向上を徹底する
・「値上げはできる」という成功体験を社内に蓄積し、適正価格文化を定着させる
➢徹底した社内準備と、組織で統一されたロジック(標準化)
➢早期かつ誠意ある説明と「理解と協力の依頼」スタンス
➢改定後の価値向上と関係維持の徹底

席の配置は、いつものスクール形式ではなく「ロ」の字に。発言者・聴講者の区分けをなくして実施したディスカッションでは、全員にマイクを回す方式で進行。自社における価格改定の実施状況やとともに値上げに対する持論や所感、エピソードトークを自由に発言しました。
ただ今回は、各社のセンシティブな内容に触れたり戦略に抵触したりするため、あらかじめ「非公開」が前提。Zoomを介してハイブリッド開催するので動画も撮るのですが公開はせず、ここのブログでもあまり言及しないことを決めごととしました。その場に居合わせたその時のメンバーだけでその時の言葉や感情、閃きを共有すること。それもライブのよさ、対面の利点です。そんな訳なので、ごく一部だけ残しておきます。

「取適法の影響もあり顧客は話を聞いてくれる印象。他方、業界内で値上げの足並みが揃わず『値上げはおたくだけだ』と言われ、交渉しにくい一面も」
「包装資材は値上げが頻繁で出しやすい。最近は資材より労務費を値上げ理由に明確化する流れ。労務費・安定供給・事業継続を訴えるレターを運用している」
「販社としてメーカーの決定を顧客に説明せざるを得ない。結局○%の攻防になり、顧客関係を踏まえ全転嫁できず自社利益を削る局面がある」
「顧客が紙代しか認めず、電気・インキ・人件費等を転嫁しにくい。紙の比率が小さく、紙10%分の値上げだけでは全体採算が合わない。総原価視点での説明設計が重要では」

このほかにも「普段から親しい社長とあり、ややなあなあな姿勢で書面を別社員に持参させたら立腹してしまいお詫びに飛んでいった」「値上げの交渉も割とすんなり受け入れてもらった。日ごろの関係性を再認識したのと同時に、当社の相場観が他社に比べて交渉前から安かったのではと見つめ直すきっかけにもなった」といった意見も。さらにディスカッションは「ハードなネゴが毎年のように続く中、部下のモチベーション維持はどうしているのか」などの相談と事例共有もありました。
原材料高騰下における「標準プロセス」の共有を目的に、価格改定説明の標準化、適正価格文化の醸成を狙った今回。適正利益の確保こそが、持続的な事業継続と顧客への安定供給に繋がるのだと再認識した、重要な企画となりました。



