2月の勉強会報告

2月17日、中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催しました。今回は、昨年度から行っている、会員同士の相互理解の促進を狙った会社紹介を実施。会員22人が出席しました。

最初に、リンテックの伊澤泰宏氏はDVDを放映。「シール・ラベル素材ができるまで」といったエンドユーザーに向けた内容と、兵庫県たつの市にある同社龍野工場を紹介し、粘着製品の製造プロセスや、同工場の特徴を映像で披露しました。

次に、共栄紙工㈱の山田裕彦社長が、京都の西陣織や丹後ちりめんを基材とする自社開発した新製品「絹織物シール」を紹介しました。長年の課題であったという印刷加工時に生じる繊維のほつれを独自技術で抑えることに成功し、製品化を果たした同シールのサンプルを回覧しながら、素材の説明を行いました。

最後に、㈱セアールの松浦保社長が登場。印刷事業のほかに販売促進事業、ライセンス事業、クリエーティブ事業を展開する同社のミッションやクレド、事業領域やビジョンを紹介しました。特に同社の特徴の一つであるライセンス事業の紹介では、テレビ番組のグッズなどのライセンス商品を披露しながら、ライセンシーとOEM供給の長所短所などを、自身の逸話を踏まえ丁寧に説明。印刷業の枠を越えた豊富な話題に、熱心に耳を傾けていました。

こうして2時間に亘った3者3様の会社紹介は終了。会社概要とともに仲間の仕事に対する想いや熱意を知ることができた、意義ある時間となりました。

◇伊澤泰宏氏(リンテック)の話

以前『ラベルの最後』を知るためリサイクル工場に足を運んだ際、ラベルが多くの人の手で剥がされている姿を見ました。ブラウン管テレビに貼付されたラベルなどは剥がすことが困難で、ラベルを打ち抜く治具で除去されていました。聞けば、筐体の樹脂は耐久性があり、再利用すれば次の製品にも利用できるため、ラベルは必ず剥がす必要があるのだということでした。
もし市場に剥がせないラベルしかなければ、どうなるでしょうか。メーカーに「ラベルを使いたくない」と判断され、レーザーマーキングや直印といった代替技術に取って変わられてしまえば、ラベルは必要とされなくなってしまいます。こうした観点から、プラスチック成型品と同じ素材を基材とする再剥離可能なラベルを開発して、剥がすことはもちろん、ラベルを貼ったままでもリサイクルを妨げない粘着素材が誕生しました。
最近の栄養ドリンクは、ヒアルロン酸やコラーゲン入りのような女性向けの商品が目立ってきました。男性ならば、購入したその場で飲みゴミ箱に捨てて終わり、というケースが多いと思いますが、女性のほとんどが家に帰って飲むようです。
女性はゴミの分別に対して熱心で、奥さまや若いOLの方は特に敏感なもの。飲み終わった後、分別のためにラベルを剥がそうとしたら剥がれず、メーカーへクレームとして上がってきたといった例があります。こういった場面に「剥がれるラベルが欲しい」という市場ニーズが生まれ、再剥離性のラベルが求められる訳です。

「剥がれないラベルが、その商品価値を下げてしまう」――商品自体の品質や性能といった評価と直接関係ないところで、1枚のラベルが持つ影響力やリスクについて事例を通じて紹介しました。リンテックは、そういったユーザーニーズをスペックインした新しい素材を開発しています。

リンテック株式会社飯田橋オフィス
東京都文京区後楽2-1-2
☎03-3868-7760

◇山田裕彦氏(共栄紙工)の話

当社の地元である京都には丹後ちりめんという伝統文化があり、この素晴らしいテキスタイルをどうにかシールに応用できないかという懸案をずっと抱えていました。課題を克服して開発を実現した「絹織物シール」は、インクジェット印刷で素材の風合いを損なわずに絵や文字を印字することができます。
コストは高いです。しかし、持っていくところはあると考えます。高級品や限定品用途としては特に効果的。お客さまの商品をさらにワンランク高める素材です。
またこれは、京都だけのものではありません。全国各地に、伝統文化として独自の織物が存在します。これをシールにしないかというアイデアに対して、当社は全面的に協力する用意があります。このように地場の伝統文化を技術応用して、地場ブランドや地場産業を活性化できるのではないかと信じています。
投げかけられた課題に対して、解決策を考え克服することが、ものづくりの本来あるべき姿ではないでしょうか。世の中はマニュアル化によって、均一で良質なものを大量に生産することが可能となりましたが、一方で、ものをつくることに込める思いが軽くなっているように私には感じられます。お客さまとの対話の中で、欲しているものを作り込んでいき、気に入ってもらえるものを提案する姿勢は、今後も継続していきたいと考える次第です。
シールは一人旅をします。土産物に貼られたものは人の手を経て全国各地を旅し、スーツケースに貼られたものは世界で人目に触れます。日本独特の素材をシール化することで、世界に日本の良さを伝えるきっかけとなるかもしれない――そんな思いをもって開発しました。
とは言うものの、「絹織物シール」の方向性や発展可能性は、まだまだ未知数の部分が多いです。この先、これをどう扱ってどう展開すれば良いか。またどういったものに有効であり、どこに持って行けば面白そうかという、世の中に出していくためのヒントとアイデアをいただければ幸いです。

共栄紙工株式会社
京都市南区吉祥院中島町33-4
☎075-662-3356

◇松浦保氏(セアール)の話

『セアールのクレド』

私たちに、出来ない理由はいりません、どうすれば出来るかをみんなで考えます。
私たちは、誰かの欲しい気持ちを大事にします、それは未来に芽を出す“種” だからです。
私たちは、トラブルが起こった時、全身全霊で努力し解決します、そうすれば 必ず「キズナ」は深まります。
私たちは、3年後の安心安全で安定した発展の為に、今、何が出来るかを考え行動します。
私たちは、仕事が私事(わたくしごと)と思える位、熱心に楽しみます。
私たちは、アイデアやプランを実行せずに否定しません、違うと感じる時は代わりのアイデアを提案します。
私たちは、常に全体最適を考え行動します、それは必ず自分最適として戻って来るからです。
私たちは、現状維持は衰退であると考えます、なぜなら世界の時計は進み続けているからです。
私たちは、こんなセアールのメンバーである事をいつも誇りにしています。

〈クレドの背景から〉
「人は誰も自分がかわいい。同様に、自分の家族や会社もかわいいものです。“自分が良ければ”“会社が良ければ”という自己中心的な近視眼的発想に陥りやすく、そのような状況下で全体最適は実現しません。自分と関わる全体を良くするために、何を考え、どう行動するべきなのかを常に意識して実践し続けていけば、最終的に、もっとも自分が楽しく快適な“自分最適”な環境が生まれるのではないでしょうか」(7番目から)
「上野の下町に住んでいた小学生の頃の話。ある日斜め前のトモダチの家が5階立ての白亜のビルになりました。トモダチのお父さんは当時、いつも屋上から下を眺めていて、私もすごいなあと見上げていたものでした。そして時が経って高校入学の頃。ふと気がつくと、いつの間にかトモダチの家が周りで一番低くなっていました。周囲にビルやマンションが建ち、トモダチの家は見下される側になっていたのです」
「周りが進歩することで、当時はピカイチであったものも、いつか月日の経過で輝きを失い価値は薄れていきます。進歩し続けなければいけない、現状維持をしていてはいけないのだという教訓を、トモダチから学びました」(8番目から)

株式会社セアール
東京都江戸川区東小岩6-11-3
☎03-3658-2100