9月の勉強会報告

Viepsは9月15日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催しました。今回のテーマは「ホログラム」と「紙器・貼り箱」。これら最新事情の講演に、会員20人が出席しました。

初めに、Vieps会員である村田金箔グループの鈴村忠幸氏と三好将之氏が講演。先ごろ村田金箔グループがホログラムの完全国内生産を実現した「オリジナルホログラム製造」について解説を行いました。

三好氏の話によると、同グループではこれまで、ホログラム製造に使用するエンボス版については海外で生産し、それを輸入して国内でホログラム製造を行ってきたとのこと。
「特に偽装防止用途が多いオリジナルホログラムにおいては性質上、エンボス版が海外生産となることで顧客は『目の届かない場所から情報が漏えいするのでは』といった心配を抱えていました。管理体制に問題はないとはいえ、こうした不安の種を取り除き、顧客の信頼性を確保するという意味合いから、製版機を導入して最初のエンボス版の生産からホログラム製造、出荷まですべて完全国産化という流れを構築しました」と同氏は説明しました。
セキュリティー面の向上以外に、三好氏は完全国産化の利点を「納期の圧縮とスピード化」と「デザインの拡張性」を実現すると主張。
「パターンホログラムの話になりますが、現在市場に流通する数百種類のパターン柄は、すべて海外の感覚でデザインされたもの。製版工程を内製化したことにより、これからは、より日本の感覚で、受け入れやすいデザイン性をもったホログラム製造が可能になるでしょう」と述べました。
その後、オリジナルホログラムの製作ステップ表をたどりながら、立体映像を表現する構造の仕組みや具体的な発注フローを確認。このほかにも、印刷市場におけるホログラムの使用状況や近年の採用事例に言及する中で、熱に弱く収縮しやすいCPPフィルムに対してホログラム加工を可能とした事例を紹介。
「この技術革新によってコストダウンが図れ、アイスやお菓子の袋やトレーディングカードの袋、ぽち袋などで仕様事例が増えました」と述べた三好氏は、ホログラムの機能性や展望を語りました。

村田金箔グループ 東京本社
東京都文京区大塚3-21-4
☎03-3947-6111

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続いて、神奈川県シール印刷協同組合青年部で現在部長を務める、㈲竹内紙器製作所の堀木淳一専務が、自社の沿革と共に紙器や貼り箱の種類と名称、技法、製作工程などの基礎知識を概説しました。

沿革によると、主に化粧貼り箱の製造販売を行う会社として1959年に法人化。79年には現住所に移転、このときシール印刷事業部門を設立したそうです。その後、貼り箱の需要減と共に同業者も姿を消していく中で、環境配慮の視点で堀木祥泰社長が包装紙のいらない「ワンピース型」(身と蓋が一体となったもの)の貼り箱を提案したところ、これが高評価。年間30万個を製造するという大きな実績をあげました。
写真と解説で堀木氏は貼り箱の製作工程を順に紹介。聴講者らは、工程の大半が機械による全自動ではなく人の手を介して組み上がっていく貼り箱製造の実態を学び、回覧中の貼り箱サンプルを一層興味深そうに眺めていました。

オペレーターとして、マークダウンシールなど捨てられることが前提のものづくりに空しさを感じていた堀木氏はあるとき、特注の貼り箱を製作した際の楽しさと、それを貰って喜ぶ受け手の姿を目の当たりにして「そのときはじめて〝こういうものを作れる会社に居るのだ〟ということに気づかされた」と心境の変化を吐露。
「一人でも喜んでくれる人が居るなら、もっとそこにこだわって作っていきたい」と、自身のものづくりにかける姿勢や信念を説く堀木氏は現在、箱や凸版印刷本来の魅力を昇華し再構築した、自身の新たなプロジェクトを推進中。講演後には、NIKKEI DESIGNなどのメディアにも取り上げられたという同氏のプロジェクトや貼り箱に関して、聴講者からさかんに質問が飛んでいました。

㈲竹内紙器製作所
神奈川県横浜市金沢区幸浦2-12-8
☎045-784-6090