7月の勉強会報告

Viepsは7月17日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催しました。今回、Viepsの勉強会では初のグラフィックデザイナーを講師に招き、㈱ドック・オーの太田智社長が「ラベル業界におけるデザインの活性化」について講演を行いました。
これまでにパナソニックや三菱電機、大塚製薬などのパッケージデザインをはじめ、東京ドームシティ内イベントホール「MEETS PORT」(ミーツポート)のネーミングとロゴマークを担当する太田氏。グラフィックデザイナーの視点から、デザインのいろはを伝授してもらいました。

冒頭、太田氏は次のようにあいさつしました。
「ラベルの訴求力が、商品の売れる・売れないを大きく左右します。私は長らくパッケージやPOPなどのデザイン制作に携わっていますが、ラベル業界の方々のシール・ラベルに対するデザインの意識に不満を感じることがあります。今日はデザインの初歩を知っていただき、シール・ラベルというモノだけでなく、それのデザインも商売の一つにして、クライアントに提案してもらうためのきっかけになれば幸いです」

太田氏は講演をテーマごとに「色の話」「目の話」「形の話」「書体の話」と区分けして、基礎知識や概念説明を行いました。

「色の話」では、マンセルの色相環をベースに、世界共通の色の相関関係と、これに基づくカラーコミュニケーションの構造について説明。
「海外の企業やブランドと仕事をする場合、PANTONカラーに準拠することが多い」と述べる一方で、「PANTONは色味に乏しい。その反面、日本のインキメーカーのカラーチャートは、渋い色や中間色が豊富。デザイナーもこうした独特な色を好んで選ぶために、皆さんにはご迷惑をかけていると思います」と、日本の色の豊富さを説きつつ笑いを誘います。
「目の話」では、海外で目にする印刷物がなぜ鮮やかに見えるのかということについて言及。
「ヒトの虹彩の色、青い目の外国人と黒い目のわれわれとでは、認識する色の見え方が違うと言われています」と、人が色を認識する構造と色彩感覚の違いを解説した太田氏は、「日本人にとって濃淡が強く感じる印刷物でも、現地ではそれが標準。一方日本人は、四季折々に模様を変える自然の繊細な色を生まれながらに目にし、それに囲まれて生活しています。日本の印刷物は、日本人の感性と色彩感覚で構成されていると言えるでしょう」と述べました。
ほかにも「形の話」では、スライドにイラストや図柄、写真を投影して「POPの形状(丸、四角、矢印、吹き出し)が与えるイメージ」について、また「書体の話」では「このキャッチコピーにもっとも相応しい書体は次のどれか」といった具合に、会員に意見を求めながら全員でデザインを検証。こうして、デザインが持つ伝達要素を学びました。

続いて、先日実際に太田氏が手がけた、会員企業の食品ラベルのデザイン事例を紹介。"安心感”"新規性”などコンセプトの異なる5パターンのデザインをスライドに示し、どのデザインが相応しいと感じるかを会員にヒアリング。その後、この中からクライアントが一点を選択したデザインのポイントなどを解説しました。
「皆さんには、ラベルがどれだけ売り上げと密接に関与しているのか、ぜひデザイン変更前と変更後の売り上げの変化まで気を配っていただきたい。売り上げが伸びれば当然顧客は喜びますし、実績を残せばまた発注もくる」(太田氏)

ほかにも「一番知りたいところではないでしょうか」と、デザイナーの制作料金の概念にも言及。太田氏は一般的な料金体型とサービス内容から、過去に手がけたデザイン事例のケースまで詳らかに公開しました。
「デザイン部門を内製化していなければ『提案できない』『仕事が取れない』ということもあるのでは。また、社内にデザイナーがいたとしても『この仕事は絶対獲りたい』と特別な力が必要なケースもあるはず。もっと気軽に、そしてもっとわれわれデザイナーの力を頼っていただければ」と語りました。

その後、意見交換を実施。
「通常、一つの案件に対してデザインは何パターンくらい作るものなのか」「一つの案件にかける時間は平均でどれくらいか」「仮に案がすべて採用されなかったとき、料金はどれくらい請求するものなのか」といったオーソドックスなものから、「このラベルをもっと売りたいのだが、改善が必要な点など何かアドバイスを」と商品を渡す会員、「ラベル素材の機能や特性をもっとデザイナーに知ってもらえたとしたら、デザインする上で使用基材を特定したより具体的なラベル提案を行える、という可能性はありますか」と問う会員も。
印刷会社とデザイナーという、近いようで遠く、知っているようで知らない両者が、時間いっぱいまで質疑応答や意見交換を通じて相互理解を深め、お互いにとって実りのある有益な勉強会となりました。

株式会社 ドック・オー
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