9月の勉強会報告

任意団体Viepsは9月13日、東京都中央区の都中小企業会館で勉強会を開催し、メンバーなど30人が参加。当日は、福岡シール㈱特販部の保科有二部長が「高付加価値ラベル印刷のソリューション」を、永井印刷㈱の永井謙太良社長が「ちょっとした工夫による新製品開発、新生産ラインの構築」について、それぞれ講演しました。

最初に、保科部長がオフセット間欠機や凸版間欠機による“のり殺し印刷”の製造技術について、POPラベルや雑誌の綴じ込みシールなどのサンプルを提示しながら紹介しました。

同社では、同技術をインラインでこなしており、保科部長は「二度通しにも対応するが、インラインでの加工は仕上がりの面で高い評価を得ています」と説明しました。
また、コールド箔加工について、従来方式との違いを解説。特徴について▽箔版コストの削減▽広範囲加工への対応▽箔による網点やグラデーションの実現▽箔加工後の印刷対応、などを挙げつつ、付加価値の高いラベル製造を実現する技術として紹介しました。
なお、コールド箔は、対応する原反に制限があり、平滑性の高いキャストコート紙やPETなどに限られると指摘しました。
同社では現在、凸版輪転機で印刷したシュリンクラベル事業も展開しており、その説明も併せて行いました。シュリンクラベルを製造する凸版輪転機は、印刷面積が最大で折径110mm(展開228mm幅)、ピッチ295.75mmまで対応するほか、最小では同50mm(同108mm幅)までとなっています。(応相談)

同印刷機では、シュリンクラベルのコールド箔加工にも対応。シュリンクラベル事業について、保科部長は「グラビアのような大判印刷はできないが、小ロットのニーズに対応できるため、需要は確実にあると認識しています。ドレッシングなどの調味料に採用された実績もあります」とコメント。市場開拓へのビジネス戦略などを明らかにしました。

福岡シール㈱
福岡市東区松島4-9-30
☎092-622-1021

続いて、永井社長がちょっとした工夫で開発した粘着の新商品を紹介。最初に、網戸の穴が空いてしまった部分を補修する“粘着性の小さな網ラベル”を紹介。「障子やふすまの穴あき部分に上から別の紙を貼り付けることで補修するように、網戸もできないかな~と考え、作ってみました」。

また同社では、大手化粧品容器の首にかけるタグ製造の注文が入った際、中間業者から「クリーンルームの設置していない工場はだめ」との要望が入ったとのこと。
それならば、「市販の設備でクリーンルームを作っちゃえ」と思い付き、静電防止フィルムを工場内に張り巡らせるとともに、空気清浄機2台を設置し、「クラス1万のクリーンルーム」を独自に設備するといった離れ業を実現しました。
「いろいろな道具は近くのホームセンターで購入しました。予算は20万円弱。それでも、クラス1万をちゃんと実現しているんです。お客さまにも納得していただけました。このように、ちょっとした工夫と行動力で、仕事の内容はぐんと広がるんです」とニッコリ。
このほかにも、リボンシールや部分粘着など、さまざまな工夫を凝らした機能性ラベルや粘着製品を紹介。サンプルを配りながら、事細かく説明を行いました。
同社では、デジタル印刷機を導入し、可変情報ラベルの製造も手がけていますが、その中で圧巻なのは、「神戸マラソンのゼッケン」。擦過性や耐水性に優れ、なおかつすべての番号が異なる衣服貼り付け用ラベルは、高評価を得たとのこと。
永井社長は、デジタル印刷分野の需要について次のように語ります。
「ラベル印刷の仕事の中で、デジタルによる受注の可能性は1%程度。しかし、その1%は仕事取り放題。今後、デジタル印刷に取り組む企業は増えると思いますが、誰でもデジタル機を導入すれば仕事が取れるというわけではありません。先行して、ノウハウを蓄積する必要があるのです」
また、ラベル新聞企画のラベルエキスポアメリカツアーで見学した海外のデジタル印刷機などを紹介しつつ、今後のラベル市場について「大きなロットの仕事は、どんどん海外で製造されることになってしまうかも。だからこそロットの小さな、なおかつ付加価値の高い仕事を開拓することで、ラベル市場の拡大につながるのです。がんばりましょう」とコメントしました。

永井印刷㈱
東大阪市御厨東1-4-23
☎06-6784-6775