11月の勉強会報告
Vieps(宍戸伊助チェアマン)は11月18日、勉強会を開催しました。今回の講師は、ソニー生命保険㈱エグゼクティブライフプランナーの鎌田聖一郎部長です。
保険業界外でも広くセミナー講師を務める同氏の「紹介の途切れない営業」と題した同氏の講演内容はすこぶる好評。特に組合青年部主催の勉強会では、今年だけで4回壇上に立っており、全国の若手経営者に営業の真髄を説いています。
「紹介を得るのに有効なツールはあるのか?とよく聞かれますが特にありません。会話から広げていきます」、と鎌田氏。それでも会話のための有効なコミュニケーションツールとして「自分史」を挙げ、配布した同氏の3ツ折式自分史について要点を説明します。
「初対面の相手を前に、緊張した空気を緩和したい・相手との距離を縮めたいという思いから、人は自分との共通点を探すものです。ですから、特技や趣味に関する項目に書くべきことは、何か特別な〝自分が書きたいこと〟ではありません。あえて普通の〝誰でもやっているようなこと〟を載せキーワードをちりばめることに意味がある訳です」とツールの目的や有効化する要点を明確化。
加えて「出すタイミングが重要。出会いが悪いと機能せず、ツールは良い仕事をしてくれません」として、何も無いよりもあったほうが敷居は下がりますと前置きしつつも、自分史の有効な使い方、作り方のコツ、過去にどううまく使ったのかといった自身の事例を交え、詳しく説明しました。
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本題に入る前に、鎌田氏はこう前置きします。
「クレームは一切受け付けません。『言われたようにやったけどうまくいかなかった』、私は知りません。私と皆さんは状況もキャラクターも業界も違う、目指すゴールも違う。そして今からお話しすることは我流です。ただし、業界問わず万人共通だということを箇条書きしてあります」
「『それは鎌田さんだからだよ』という〝逃げ〟の考えに陥ると、今日の時間は一切ムダなものになります。繰り返しますが〝鎌田はたまたまこういうやり方をしたら紹介が途切れないでいる〟、という一方的な報告会です。今日聞いて一つだけでも『ああなるほどな』『それなら自分でもできそうだ』という部分があれば、私としては御の字です」
「営業とは自分のためやあなたのためではなく、あなたの大切な人のためや世の中のためにと主語を変換する」
「紹介にはストーリーが重要」
「必殺トークなんてない」
「紹介はどんな高度なセキュリティーシステムも越える力がある」
「学者・役者・易者と営業は三者を兼ねた存在であれ」
2時間近くにおよぶ講演中にはこうした〝こんな営業していませんか〟という問いかけや示唆やヒントが次々飛び出し、それぞれ一つずつにその解説と関連するエピソードを披露します。こういった類の話は、一歩間違うとビジネス新書からいいとこ取りしたモノに陥りやすいものですが、いずれもすべて自身の経験則から導き出した結論。軽快な鎌田氏の語り口は次第に熱気を帯びてきて、語る側も聞く側も真剣。営業とはそもそも…という概念から実際の具体的な手法や立ち居振る舞いに至るまで、とても書ききれないほどたくさんの成功例、失敗談、胸を打った体験や壁を乗り越えた経験談を熱弁しました。
鎌田氏は「特殊な技術も訓練も必要ない。形は違ったとしても、皆さんすでに実践していることもあったのでは。今日何か一つでもそれに気がついていただけたら」「どの産業でも共通するのは、業界を良くするのだという姿勢。そして、業界の中で経験を伝え合いシェアしていくことが大事です」と締めくくって講演は終了しました。
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そんな2時間にわたる講演の前の〝くすぐり〟として、鎌田氏はこんなエピソードを話してくれました。
つい数日前、テレビ局の食堂で某有名ソムリエと出会いました。局の職員なら普通声をかけたりしないのでしょうが、私は偶然居合わせただけの部外者ですから、厚かましく話しかけてみたのです。
会話の中でワインは何がお好きですかと聞くと「ワインは嫌い、日本酒が好き」だといいます。あくまで仕事だから飲んでいる、という某氏は、これから100本近く試飲をして、全部にコメントを書かなければならない。途中からそりゃビール飲みたい、日本酒飲みたいと思いますよ――。すごく気さくで面白い人だと思いました。
凄いのは、ちょうど私が食べていたお寿司に話題をからめて話すんですよね。
有名なので接待されることが多いそうで、「私を満足させてくれる接待を受けたことが滅多にない」と言うんです。何だ偉そうな人なのかと思ったら、どうやらそういうことではない。
「一番接待されて困るのは寿司屋さん」。理由は「行けば必ずこうなるから」と某氏はこう話してくれました。
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「先生、好きなネタをどうぞ」と先方も気を遣ってくれます。まあいきなり「大トロ」はないだろうと考え、「それではイカをいただきます」と切り出します。と思えば、接待する側は自分たちだけやれウニだ、やれ大トロだと、こうくる訳です。
ここで大事なのは、こういった会は大概初めて会う人ばかりということ。『同じものを同時に食べないと、話題にならない』ものなのです。ウニ、大トロ、イカでは話が成立しません。一方、例えばフランス料理は違う。フランスでは家庭でも同じ料理を皆で食べます。同じものを味わい、それについて「これ美味しいですね」と感想を述べ合うだけで、どんな初対面同士でも共通の話題が出来るものです。
では、お寿司屋さんでどういう接待なら喜ばれるか。私なら「皆さん、今日は私に任せてください」と言うでしょう。同時に同じネタを食べ、それに合うお酒を出す。そのネタには純米のこれ。これには大吟醸のこれ、といった具合に。同じものを食し、これ美味しいですね、合いますねと感想を語り合い経験を共有することを通じてきっと会話もはずみ、双方にとって良い時間が過ごせると思うのです。
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いきなり話しかけてきた素人にも、目の前のツール(寿司)に絡めてひとつ話をしてくれるプロの力量を垣間見た、という鎌田氏が仕掛けた本題前のウォーミングアップでした。
この話の中にも相手に興味を持つこと、一方的な心遣いによる錯誤、交流したいと思う場面で何を重視すべきか、といった鎌田氏流の示唆と、今日の講演内容の伏線となるエッセンスが、しっかりあちこちにちりばめられていました。