9月の勉強会報告
Vieps9月16日、銀座の中小企業会館で勉強会を開催し約30名が出席しました。今回のテーマは「検査装置の最新事情を学ぶ」。メーカー2社を招きました。
はじめに講演したのは、ウエブテック㈱。営業部の大沼秀平氏は「当社は産業機械用ドライブ制御システムの設計製造を行うFAシステム事業と、画像処理システムや検査装置を扱う検査関連事業の2本柱で構成しています」と自社の紹介を行います。
「輪転機やグラビア、フレキソ印刷機の巻き出し巻き取り機構、スリッターの設計や制御装置に携わっており、巻き物を制御する技術から“ウエブテック”という社名になっています。カメラ主体の検査装置メーカーに対して、われわれはFAで培った機械主体。各社の生産ラインや設備環境に合わせた設計や、工程全体を構築する提案もできる、という点が他社にない強みです」
(左が大沼秀平氏、右が厚地敬太氏)
CCDカメラ型乱丁防止検査装置やオフセット枚葉印刷機用のインライン検査装など、これまで国内で6,000台以上出荷する同社は今春、1秒間に10枚、毎時36,000枚の枚葉ラベルを高速搬送し印刷品質を検査する「LTS200」を開発してラベル業界に参入を果たしました。
同機の最小分解能は0.09mmで、これの倍の能力も対応可能。エンボスや蒸着、ニス塗工に対する検査のほかシワの検出、ほかにも変形ラベルの検査も可能といった機能を備えています。LTS200が検査を行う動画では、まるでシートラベルが飛んでいるかのうように搬送され、NG品をきっちり仕分けていく姿を視聴しました。さらに動画では、検査品が指定した数ごとに仕分けされ、帯掛けを施して搬送するといった製造ラインの自動化を構成しており、ウエブテックの“工程全体を構築する”提案を実証していました。
同社の厚地敬太氏は、検査装置の市場性をこう説明します。
「印刷市場が年々シュリンクしIGASなどの展示会が規模縮小していく中で、出荷台数を伸ばし出展者数を増やしているのが、デジタル印刷機と検査装置。もはや〝持っている〟だけでは、他社との差別化を図る明確な要因とはなり難いと言えるでしょう。重要なのは、検査装置の運用体制。これが品質保証の差別化になります」
「一つの仕事をABCの3社に振り、A社には80%割り当てられました。その中で重大クレームが発生。割合から、当然最初に疑われるのはA社です。A社は検査装置を所有。さらに『当社ではコンマ○以上は必ず検出する仕組みになっています。今回の不良の大きさなら、当社のフローでは必ず網にかかるはず』と、履歴と共に運用法を説明し、ちゃんと『うちではない』ことを主張できました」
検査装置が商品品質を決めるのではなく、運用方法が商品品質を決める。両氏は、ワークフローで検査装置を運用して顧客と品質保証を約束することが肝要であると示唆しました。
続いて、ナビタスビジョンソリューション㈱(NVS)から辻谷潤一社長が登場。
「デジカメやボールペン、ビデオカメラや化粧品ボトルといったプラスチックの成型品へのホットスタンプ機やパッド印刷機を扱うナビタスが親会社。その中で、加工後の品質検査ニーズから検査装置の開発がスタートしました。その後成型品から電子基板へ、そしてカードの可変情報の検査へと発展し、これが支持され、検査装置部門が独立して生まれた技術者集団です」と自社の成り立ちを紹介しました。
同社が今夏上市した、毎分300mの検査速度を実現するロール・ツー・ロールタイプの最新機「NaviLab-HSY」をはじめ、校正・刷り出し検版システム「Navi Scan」、枚葉ラベルやカードをコンベアで自動搬送して全数画像検査を行う「NaviCon-Ⅱ」、最大基材幅200mm・ロール径350mmと小ロット印刷を意識したコンパクトな設計ながら、搭載する処理ソフトはほかの上位機種と同じ卓上サイズのロールラベル検査装置「NaviLab-Lite」といったラインアップを動画も用いて紹介。そして、同社検査装置の核となる独自の検査アルゴリズムを搭載したソフトウエア「ナビタスチェッカー」の構造と有効性をていねいに説明しました。
検査装置を運用する上で避けられないのが過検出の問題。検出する設定を厳しくすればすぐに停止して作業が進まず、かと言って設定を緩めてしまえば重大なエラーを見過ごす恐れがあります。
そこでNVSが今夏発表したのが、「ハイブリッドフレックス方式」です。
「例えば①抜きズレは0.5mmまでOK②印字は0.3mmまでOK、という場合。通常では①か②のどちらかにしか基準値を設定できませんので、①に合わすと印字エラーが生じる可能性があり、②に合わせは過検出が生じて進まない。『ハイブリッドフレックス方式』は、“抜きズレ”は0.5mm・“印字”は0.3mmで、と1回の撮像データ中に別々の検査基準値を設定でき、同時に検査することを可能とした独自機能です」(辻谷社長)
1枚の撮像データで印字という「固定情報」と連番のような「可変情報」を同時に検査したり、また1枚のデータの中で検知基準を別々に設定できたりと、NVSはより厳しく・より早く・より確実にを実現する『現場志向の検査装置』を特長としています。
終わりに辻谷社長は 「競合他社でも技術を公開するのが当社のスタンス。メーカー、プリンターの品質管理に寄与して、海外企業に負けないメード・イン・ジャパンのものづくりを支援していきたい。これが、小さなわれわれの大きな夢です」と締めくくりました。
講演後、会員から「製版の段階で不備を検出できれば、以降の印刷ロスが減らせるはずでは」と提起。試し刷りしたものではなく、製版後の透明な樹脂版自体を検査できる手法や検査装置はないものか、など、闊達な意見交換が続きました。