10月の勉強会報告
Viepsは10月15日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を行いました。
今回のテーマは「粘着フィルムメーカーから最新動向を学ぶ」。講師に日栄化工㈱とキソ化成産業㈱のご担当者をお招きしました。
前半は日栄化工が登場。同社と言えば、粘着面に施した無数の凹凸部で、基材の貼り付けで生じる気泡やガスを抜く「マトリクス」技術を考案した“ワサビ色の剥離紙”の「NE-tak」ブランドを展開する企業です。東京支店の廣畑一郎次長が講演しました。
はじめに同氏は、会社概要と事業領域を紹介。東大阪に本社を構える日栄化工は1967年設立。本社以外に東京に2個所と名古屋、海外は香港と上海に営業拠点を持ち、生産工場を三重とタイに構えるそうです。
同社のフィルム粘着紙は印刷材、サイン建装材、機能材に大別できるとして「お客さまからこういった基材をこういった所・こういったモノに貼りたい、との要望を受けて、レギュラー品で対応可能ならばそちらを紹介します。カスタム品でもA4サイズからロールまで約1週間でサンプルを作るといった、スピーディーな対応を信条とします」と述べました。
粘着剤に関しては「取り扱う大半はアクリル系。残りのウレタン系は、主に再剥離用途、画面保護用途などに用いられます」と説明。加えて、用途に合わせた特殊粘着剤として▽Oシリーズ…油面用▽Gシリーズ…窓ガラス用▽Mシリーズ…人体貼り付け用▽Dシリーズ…導電性、といったラインアップを紹介します。
さらにこれら粘着剤に対して、紫外線をカットして被着体への影響を減らす『UVカット』、透明な粘着剤を着色することで識別しやすくする『着色加工』、フィルム基材の表面に薄膜塗工を行って機能性を付与する『オーバーコート』と、機能を追加できると紹介した廣畑氏。
「当社のフィルムタックは表面基材・粘着剤・剥離紙の3要素をフレキシブルに組み合わせて、環境や条件に適合した材料選定や評価用サンプルの少量試作など最適な機能性材料が可能です」と総括。小回りよくカスタマイズを得意とする自社の特徴を会員に説明して、日栄化工のさまざまな製品群を紹介しました。
質疑応答では、以前同社の基材を使用していたという会員が、当時の使用感や基材評価を述べた上で、現在のラインアップとの差異や供給形態を確認していました。
後半は、キソ化成産業。東京オフィスの中島信専務が講演しました。
創業者の名字、木曽を由来とする社名の説明からはじまり、富士フイルムの特約店としてセルロイドやカメラのネガフィルムにあたるアセテートの販売を経て、現在はフィルム販売、フィルムおよび特殊紙の加工販売、OAラベル等のOEM製造といった “裏方”としてシール・ラベル業界に関与していると一通り概説しました。
「時代の変遷に従い、売るものも変わっていきます」と社史を話す中で中島氏は、アニメのセル画にも用いられたアセテートの次は、PETの登場に伴い版下やOHP(オーバーヘッドプロジェクター)用途に用いられ、さらに粘着剤を塗工したラベル、特殊紙、紙とフィルムを積層化したシートを製造販売。その後OHPは20年くらい前から液晶プロジェクターに置き換えられて下火になります。
「現在、レーザープリンタの印刷品質も向上して、オフセット印刷物も簡単な物は置き換わりはじめています。レーザープリンタに打てる各種素材へのニーズが高まると考え、プリンタメーカーの推奨サプライにも選ばれるような透明フィルム基材や蒸着紙をそろえています」
通常、感光ドラムへのトナー定着に静電気を用いるレーザープリンタは、金属成分を含有する蒸着紙はスパークを招くため使用できないもの。同社の「メタリックペーパー」と粘着剤を塗工した「同ラベル」は、独自の製法でこれを克服。これら基材をはじめ、レーザーの熱でも溶解しない「透明OHPフィルムラベル」などについて「飲料メーカーでは、ダミー缶やシュリンクラベルを想定して使用されています」といった事例を紹介しました。
そして、キソ化成のもう一つの特徴は、米フィルムメーカー、フレックスコンの日本代理店を務める点。
フレックスコンは、従業員数は1,000人以上、年商約300億円というフィルムラベルだけしか製造しない特殊なメーカー。「ただしフィルムラベルなら何でも作る」(同氏)ということで、ラインアップは数千種を誇り、製品も次々と生まれては消えていく新陳代謝の早さゆえとてもすべて覚えていられないのだと言います。
その中でも「『バスアート』は溶剤系IJPのラッピング用基材。『シースルー』は規則正しく基材に小さな穴の開いたフィルム。ガラスの外からは絵が見え、中からは外の景色が見えるというもの。ここ銀座では、かつてシースルーをスクリーン代わりに映画の予告編を流すプロモーションに使用されたことがあります」とラインアップと国内での採用事例に言及。基材サンプルを配布しながら、特徴を紹介しました。
フレックスコンとの関係について同氏は「世界規模で販売している相手から、各国のさまざまな情報が入ってきます。それを製品開発や、国内での販売戦略のデータとして参考にしています」と述べました。
講演後も質疑応答の時間を超え、舞台を移した懇親会の席でも、2社と意見交換を行う姿が見られました。