1月の勉強会報告

任意団体Viepsは1月16日、中央区銀座の都中小企業会館でメーカー2社を招いて勉強会を開催しました。2015年初回は、オンデマンド印刷後の箔加工と、刷版や印刷物の比較検査の有効性に関して。会員25人が参加しました。

はじめに講演したのはダイニック㈱。同社は熱転写プリンタのインクリボンや書籍装幀用クロス、不織布や食品容器密封用アルミ箔などを製造加工販売するメーカーです。今回は、電子写真方式でプリントされた出力物に対して箔を転写するという、オンデマンド箔加工機「DC-1」を紹介。鈴木陽一グループ長が講演しました。

通常のラベル印刷機を使用して印刷を行う場合、箔押しは特別珍しい後加工技術でも何でもありません。しかしデジタル印刷後でプリントした印刷物に対して箔押しをしようとなると、話は別。折角無版でできあがった少量のラベルに対して箔版を起こし、印刷とは別工程で加工を行うとなると、煩雑さは段違いで当然コストアップにもなるため、オンデマンド印刷物+箔押し加工は途端にハードルが高くなります。
当技術は、単純に言うと「トナーに箔を転写する」というもの。トナーが接着剤の役割を果たし、搬送された最大A3サイズまでのシートの印刷した部分に、加熱したローラーで専用箔を圧着させて巻き上げます。鈴木氏によると、本来は〝名刺の社ロゴにワンポイント〟とか〝年賀状の『賀正』の文字を金にする〟ために箔を転写するための機械なのだそう。ほかにも「賞状のフチ枠の印刷用としても導入されています。箔版も特別な加工技術も要らず、コピー機を用いた印刷物でも箔を転写できるので、校章や市章を入れた立派な賞状を1枚から提供できます」とビジネスヒントを説きます。
当日は会場に実機を持ち込み、目の前で箔の転写加工の実演を行いました。

あらかじめ会員が持参したPETやPP、合成紙や和紙といった出力紙や、HP Indigoで印刷したシートラベルへ、金箔の転写を施します。
エレクトロインキことIndigo独自のトナーは、一般的なプロダクションプリンタとは構造が異なるという特殊性から、まったく同じようには仕上がらない様子。「ウチの安物ならうまくくっつくのにね」と茶化すメンバーも。

ほかにも、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックとどのトナーにも等しく転写するか同デザインで色を変えた印刷物を持参するメンバーや、デザインの一部に箔加工を施す作業ができるか確認するため、転写したくない部分を覆うためのマスキングをわざわざ用意してきた熱心な会員も。加工後にはすぐに回覧し、全員で品質や基材別の相性を検証しました。

鈴木氏は「オンデマンドプリンタがかなり普及したことで小ロット印刷でも価格競争が生まれ、単に『小ロットできます』だけでは他社との差別化が図りにくくなっています。アタマ一つ抜け出す手段として、小ロットのシール・ラベルへ簡単に箔加工が施せるという新技術を有効に利用していただければ」と訴えました。

続いて、画像比較検査装置「ホールマーカー」を販売する㈱ジーティービーから、東京支店の関本太一氏が講演しました。同社は、昨年の勉強会の中で、検版用の検査システムについて情報を得たいという会員の要望から実現したものです。

関本氏はスクリーンに『左右の画像、どこが違っているか分かりますか』として、医薬品の添付文書の一部分を切り取ったという表示を投影。耳慣れない専門用語を相手に右に左に視線を交差しつつ、無数の項目が記される中から欠落や文字欠けを目視で慎重に拾い上げるのは至難の業だと、誰もがゲンナリします。
「印刷物と校正を重ねて、パタパタ仰ぎながら間違いがないか目視検査をしていらっしゃる会社が多いのでは。因みにこのスライドの間違いは5個所。言われてみれば簡単に見つかるでしょうが、普段は〝5個所ありますよ〟ともちろん誰も教えてくれません」

「印刷物、製版、DTPとデータを修正するなどいろんな段階で検査は行われ修正が施されます。納品前にエラーが見つかれば▽紙・素材・インキ・刷版の刷り直しコスト▽加工・梱包・箱詰めの後処理コスト▽印刷機のスケジュール変更・残業コストの時間のロス――が生じます。しかし納品後にエラーが見つかった場合は、賠償問題や信用失墜に直結します」
関本氏は検査が伴うシーンについて▽制作時の修正箇所や修正ミスの検査▽完全データのゲラとRIP後データの対比▽再版時の見本と在版の照合▽面付け後の校正紙と単ページとの内容検査▽刷り出し時の印刷物検査▽出荷時の校了紙と本紙との内容検査――といった事例を列挙。これら検査工程で使用されるさまざまな媒体(レーザープリンタ用紙、インクジェット用紙、印刷本紙、デジタルデータ等)の組み合わせを問わず、比較検査を行うGTBの「Hallmarker」(ホールマーカー)を説明しました。

「能力差や疲労度により変動してしまう人間の目に依存した検査品質に頼らず、仕組みをうまく使って検査を実施していただければ」と運用の有効性を提唱。大手医薬品会社が印刷物の受け入れ検査でも採用するという、GTBの検査ツール群とそれぞれの特性、ユーザーの反応をていねいに紹介しました。