3月の勉強会報告

任意団体Viepsは3月16日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を行いました。
今回の講演名は「ものづくり・商業・サービス革新補助金セミナー」。政府のものづくりを支援する当制度を上手く利用して設備投資を図るシール・ラベル印刷会社も多く存在しており、当会員企業でも複数いる様子。ひときわ注目度の高いこの制度の概要を学ぼうと、今回、いつもより多くの聴講者が集まりました。

講師を務めるのは、㈱高崎総合コンサルタンツの萩原義昭課長。実は同氏、前職ではラベル印刷部門のある印刷会社に従事していたそうです。お陰で講演は、教科書や参考書を淡々と読み上げるでもなく、はたまたまたくかけ離れた産業分野の事例紹介ではなく、印刷会社の実例ばかり盛り沢山。聞く側にとってはより耳馴染みのある話とあって、質疑応答を含めると2時間に渡る講演も、しっかり聴講できました。

「『補助金が欲しいのだがどんな機械がいいのか』『どうすれば通るか考えてくれ』という方がいらっしゃいますが、そういうご依頼はお断りしています」。冒頭から投げかけられた強い主張で聞く側に緊張感が生まれ、講師の言葉に集中します。
「『何が欲しいのか』『なぜそれが必要なのか』。これに情熱を持って語れない企業は通りません。いくらテクニカルな文章を支援しても期待に添えないだろし、仮に通ったとしても事業が成功するとも思えません。本当に必要な機械等があって、もし補助が受けられなくとも買っていい、という強い気持ちがあるのであればぜひ挑戦するとよいでしょう」と説き、強い意思のある経営者を支援するための制度なのだと事業の何たるかを端的に明確化しました。

はじめに現在公示されている補助金関連をまとめ、このうち「平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金」について同氏は「一昨年は1,000億、昨年1,400億の予算が付きましたが今年はまた1,000億円に。来年度も事業名を変えて何かしら類似した制度が登場するのでしょうが、いわゆる『ものづくり補助金』という名目で大きな予算が付くのはおそらく今年が最後になるのでは。その点もふまえ、現制度上ではラストチャンスかも知れない機会であることを認識して、しっかりとした対応が望まれます」と述べました。

レジュメ以外の配布物として、実際の申請に使用する書面のコピーも用意。これになぞりながら、各項目の説明と共に『ここには何を記載することが望まれているか』『どんな情報を明示するのが適当か』といった、限られたスペース内で確実にツボを抑えるための勘所を指南。申請が通った事例・通らなかった事例を交えて具体例を示し、さらに「昨年通った事例であっても、今年それと同じ内容を提出しては難しい」など、前年度との傾向の変化についても詳らかにしました。
その一つとして、昨年度自身のクライアントでCTPの補助金を受けた事例を話し、同時に「今年は難しいだろう」と予測。
「今、わざわざ前モデルより生産性の悪い機械を作るメーカーなんて存在しません。同様に、前モデルより余計電気を浪費します、なんてことも普通あり得ない。それを踏まえてCTPですが、導入効果・メリットとする要素を『生産性向上』や『環境配慮』に委ねるにはあまりに乏しい」
「ただし、それは当制度の“ものづくり”にひも付けした場合。これが仮に『CTPでお客にこんなメリットが生まれる』という“サービス革新”の部分にリンクした申請に落とし込んで論じられればあるいは」と補足。さらには折り機やローラーの交換でも補助金が通った事例もあるのだと語り、機械で「モノ」を作るだけに留まらず、それによってどんな新規サービスが生まれるのかという「コト」を捉えるべし――といった、印刷産業全体が直面しているインク・オン・ペーパーからの脱却の必要性を示唆しました。

臨場感のある事例以外にも、「補助金と助成金は何が違うのか」「仮に6月に申請が降りても実際の支給は来年の12月なので『当面の運転資金に』とはいかない「昨年にはなかった『認定支援機関確認書』とは」「“提出は任意です”という補足資料は“必要です”と考える」などの基礎的情報もしっかりと紹介。
終わりに萩原氏は次のように語りマイクを置きました。
「申請書とは、経営者が夢を語る場です。そして、ものづくり補助は、国が貴社に投資するという行為。投資に値する価値あり、と判断してもらえるだけのプランを提示できているか・国を貴社の夢に巻き込めるかどうか、という挑戦なのです。たとえ針で開けたくらいの小さな穴であっても、そこに信念をお持ちならば、われわれはサポートします。共に戦略を考え万全の準備をして、その穴をこじ開けましょう」