湯けむり研修会を実施しました
Viepsは6月12日、毎年恒例の技術研修会を開催しました。今年の舞台は、初訪問となる湯の街こと、大分・別府。当地のラベル印刷会社2社にご協力いただき、生産現場を視察しました。
いざ当日、当地に立ちこめたのは、湯けむりならぬ濃霧。この影響で、大分空港に飛行機が離着陸できないというハプニングに見舞われました。開始時刻の午後1時に間に合ったのは一人だけという状態で、中には到着地が福岡空港に変更となり、急きょ特急電車で博多から別府を目指した会員も。今年の研修会は、いきなり波乱の幕開けとなりました。
1時間半遅れでようやく開始となり、はじめに一同は㈲文化プロセスを訪れ、宍戸伊助チェアマンが尾形晴義社長と、㈲エイコー印刷・安部幸徳社長に感謝の意を述べました(写真右は安部秀徳専務)。その後、会員は2班に分かれて両社の見学を開始しました。
文化プロセスでは、下絵付きのハガキに「水彩絵の具パレット」が付属する、同社のユニークなオリジナル商品「絵手紙 楽彩」の説明VTRを視聴しました。楽彩は、水筆を使ってパレットの絵の具を溶かし、別府の風景や大分の名勝が描かれたデッサン調のモノクロ下絵に、色を塗っていくというもの。絵の具を持ち歩かなくても、また絵が下手でも、下絵に色を塗っていくだけで味のある絵はがきを作ることができる、という趣旨です。ハガキに描く「絵」を変えさえすれば全国の都市、街、村の風景を楽彩仕様にできるため、地域資源を絵はがき化して町おこしを推進する事業についても説明を受けました。
次いでスクリーン印刷の「いろは」について。まだまだ知らない基礎知識をていねいに解説していただきました。
例えば線数のお話し。「80線も可能ですが、一般的には60線。さらに、大きいもの(=遠くから見るもの)に関しては、30線の方が良い」、とのこと。実際に30線で印刷したスチレンボードを2、3m離れて見ると、まったく荒さは感じません。
「大きいものは材料の伸び縮みがあるので、線数が高いと網の配置がズレやすい。さらに網の目詰まりやヤレのも増えるので、結果的に低線数の方が安くなります」と説明しました。
スクリーンと言えば何となく版代が高そうな印象でしたが、こちらでは版の再利用をしているとのこと。低価格で工面する仕組みになっていました。
工場内には、印刷物が大きな看板から小さな提灯までさまざまなので、それに併せた印刷機や製版設備が整っていました。スクリーン印刷の工場を見学したことのない会員からは「独特のインクの匂いが印象的だった」「見た限りでは1枚1枚手刷りで仕上げていて、作業はかなり大変そう」などといった感想も聞かれました。
続いて、徒歩約3分の距離にあるエイコー印刷へ。安部社長と、ご子息の安部秀徳専務が一同を迎えてくださいました。
同社の代名詞でもある3台のオフセット間欠機をはじめ各種印刷機、多機能製を有した箔押し機から製版室まで、しっかり見学させていただきました。比較的地元を中心とした食品や酒類のラベルが多いとのことです。
特に驚いたのが、この4月に入社なさったという新人さんを含め、15台を8人で回す同社の“現場力”。多くの印刷会社は、印刷品質を維持するため一台につきオペレーターが一人担当するもの。エイコー印刷では1人が2台を担当し、印刷品質をしっかり保っていることに大変感心しました。1人でオフ間欠、凸版間欠、平圧、抜き、箔押しとどれでも扱える・急に一人二人休んでも何とかなる、というのが基本方針なのだそうです。
そんな工場内は、しっかりと整理整頓され大変奇麗。少人数でたくさんの機械を管理するための機械配置や導線確保となっていることが伝わり「きっと大変働きやすい現場なのだろうな」、という印象を受けました。刷り出しチェックは工場長のハンコは不要。隣のオペレータ同士で確認し合うことで、全員が責任を共有しているとのことでした。
売上目標を立てると、クリアするために利益率が犠牲になりやすくなるので「売上目標は作らない」、家族と過ごす時間を重視してもらいたいから「基本残業なし」。そんな安部社長の夢は「全社員が戸建ての家を持つこと」――。自社紹介の中で語られたエイコー印刷の経営方針と安部社長の社員に対する思いが、とても印象に残りました。
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充実の研究会の後は、今回お世話になった皆さんや福岡からのゲストを交えて懇親会を開催。
お店ではこの日のためにに水槽トラックで活魚を仕入れていただいたそうです。豊後水道の海の幸、関サバに活イカの刺身、カツオのタタキ、鯛のしゃぶしゃぶにチキン南蛮。一同心ゆくまで堪能しました。
2次会3次会に繰り出す会員、翌日に別府の秘湯を巡って帰る会員と、2社の手厚いご協力のもと湯けむりツアーは無事幕を閉じました。