7月の勉強会報告

任意団体Viepsは7月19日、東京都中央区銀座の中小企業会館で勉強会を開催。会員24人が参加しました。
今回のテーマは「先進のツールと技術でイノベーションを起こす」。はじめに、㈱アポロジャパンの岸上郁子社長が「スクリーンコード」について講演を行いました。

スクリーンコードとは、スクリーンコード」とは、目視判別が困難な極小のドットパターンを印刷物に配して、デザインに影響を与えることなく情報を埋め込む同社の特許技術。ドットの配置のズレを利用して情報を埋め込み、2×2mmの中に直径約40μmのドット36点で1つのコードを形成します。この〝見えないコード〟を専用のペン型リーダーやスマートフォンで読み取ることで音声・映像・ウェブサイトのコンテンツを結ぶという「モノ」と「情報」をユーザーにつなぐソリューションです。
岸上社長はスクリーンコードの基本構造から運用フロー、印刷方法や実際の採用事例、ほかにもARと異なる特徴や正式発表前の技術まで、広く概説しました。
実用例の中で岸上社長は、英語の学習教材に言及。「ペン先から照射される赤外線センサーが黒色に含まれるカーボンに反射し、読み取ったコードに応じてペンから音声を再生する構造です」と説明しました。さらに近年では、失語症や自閉症の患者向けのコミュニケーションツールに応用され現場ですでに運用が開始されていることを告げました。
さらに海外事例として、PETボトル飲料のシュリンクラベルにスクリーンコードを採用したプロモーション事例を披露。今春から放映開始する日本のアニメがあしらわれた飲料に採用して、動画によるキャラクター紹介を行った実施しました。台湾のグラビア印刷会社が印刷機にインクジェットヘッドを取り付けて、可変情報印刷を行って実現したそうです。

「ラベルは何かに貼られることで、それまでの『印刷物』から『モノ』へ属性が変わります。意匠を損なうことなく、モノをさまざまなコンテンツにつなぐのが、スクリーンコードの役目です。コア部分の研究開発はすでに終了。後は社会課題やニーズに当技術がどう役立つことができるか。各位の発想やアイデアをいただきたく思います」と期待を語りました。

続いてDICグラフィックス㈱が登壇。今春発表した色指定の新たな仕組みを提供する情報配信サービス「DIC COLORCLOUD」を、谷口真一郎主任研究員が解説しました。

これは、クライアント・デザイナー・製版・印刷の各部門と、川上から川下まで指定した色のデジタル情報を共有するための〝カラーコミュニケーションツール〟。これまでに数十万ダウンロードされている同社の無償アプリ「DICデジタルカラーガイド」を見ながら、選択した色が印刷方式、使用基材といった条件ごとにどう再現されるのかを、画面上で知ることができます。これを運用することで、企画時にカラーチップで見た色と最終的に印刷された製品の色が異なって「思っていた色じゃない」、というギャップを埋めることができる、という訳です。

選択した色のデジタル情報は、パッケージ印刷用の校正システムにも応用できます。ドイツGMGの色校正ソフト「オープンカラー」で、決定した特色インキの色情報を数値入力することで、特色印刷のデジタル校正が可能となります。ほかにもクラボウのCCM「AUCOLOR」とも連動しているので、特色インキ製造を円滑化するなど、トータルソリューションとして運用できます。

「EUの旗の青色がなぜ各国でこれほど違うのでしょうか」、とのイントロダクションから谷口研究員は、開発経緯や基本機能、運用効果を説明した後、実際にDIC COLORCLOUDを操作して運用してみせました。
最終印刷の色でデザインの色決めができれば、どれだけ印刷会社はクレームから開放されるでしょうか。これを実現した当機能は〝望ましい色指定の在り方とは〟に対する〝回答〟なのだと説いた谷口氏に、熱心な質問が相次ぎました。