11月の勉強会報告

任意団体Vieps(宍戸伊助チェアマン)は11月16日、東京都中央区銀座の中小企業会館で2社を講師に招いて勉強会を開催しました。

はじめに登場したのは、大王製紙㈱。ラベル印刷用粘着紙・フィルムを取り扱うタック紙部から、上田和久課長と関口陵広課長代理が講演を行いました。

上田課長ははじめに、日本製紙連合会集計の「2016年紙・板紙内需試算」を引用。スライドに映して、数字を追いながら印刷産業の健康状態を説明しました。
「紙・板紙内需試算 成長率と構成比」では▽新聞用紙▽塗工印刷用紙▽非塗工印刷用紙▽情報用紙▽包装用紙▽衛生用紙▽段ボール原紙、といった各項目を対前年の増減がビジュアルで分かりやすいようグラフ化。出荷量推移に触れながら、「紙器用の白板紙は簡易包装化で減った」「通販が好調なので段ボールは増えている」「ただ夏の天候不順で青果物が不作となって当初予測より下回りそう」など、プラス・マイナス要因を項目ごとに概説しながらマーケット概況やトレンドを説きました。

また関口課長代理は、大王製紙グループが持つ技術を横展開して製造された、さまざまな自社製品群を紹介。
「オリンピック開催地では合法的で持続可能な木材資源の使用が望まれている」として、FSC認証紙を採用した「FSC認証タック紙」について、サンプルを回覧し素材感と風合いを確認しながら紹介しました。
また、同社の合成紙「NSシリーズ」についても言及。「基材表面に施した塗工層によって印刷を鮮やかで印象的に仕上げる」「コシが強くスタンドPOPに向くほか、ラベラー適性にも優れます」などと特徴を説明し、会員から質問を受けていました。なおNSとは「New Synthesized Paper(新合成紙)」の最初の頭文字2文字を取ったものだということです。

続いて、サカヱ彫巧社の舛重聖長社長が登場。印刷物の箔押しに関する基礎知識と、トラブルシューティングについて講演しました。

サカヱ彫巧社は主に、パッケージや成形品向けの箔押し版や浮き出し・エンボス版を提供する箔版屋。舛重社長は、特に「金属版の熱膨張と熱維持」に関して要旨を論じました。
「熱と圧力がかかる金属製の箔押し版は、版自身が伸びている。皆さんが口にする『箔がずれる』『箔がうまくつかない』原因は、金属の膨張と、それに起因するさまざまな要因によります」と提唱。
同氏は▽温度設定は対象物・箔によって変わる▽機械やオペレーターによって変わる▽外気・内気によって変動▽金属にも縦目横目がある▽熱をかけて箔押しを行うと金属は圧力から逃げようとする、などと理由を説明。補足として、亜鉛版・厚真鍮・硬銅版・マグネシウムの4素材を取り上げ、110℃、120℃、130℃、140℃時に100×100mmから縦横がそれぞれどれだけ熱膨張で伸びたのかを測定した検証数値を公開。

この上で「箔版は箔押しを行うと熱が逃げる」「金属の種類によって熱を維持する量が異なる」「熱伝導と熱を維持する力は別」などと説明。舛重氏は「回転数を上げて箔押しを速くこなすと、箔押し時に逃げた熱が次のアップダウンまでに戻りきらず、徐々に箔の付き方が悪くなっていく。オペレーターはそれを嫌って、温度設定を高くする。すると箔版が膨張するのでズレが生じ、箔もやけてしまうという負のスパイラルに陥ってしまう」と原因を説明しました。
このように金属板基礎知識に豆知識、よくある悪例と解決法などを説きながら、会員と質疑応答を繰り広げていました。