7月の勉強会報告
任意団体Vieps(宍戸伊助チェアマン)は7月10日、中央区銀座の中小企業会館で月例勉強会を開催。会員外企業も含め30人が受講しました。
今回の講演テーマは「AI(人工知能)の基礎を短時間で学べる初心者向けセミナー!」。AIで何ができるのか、自社で活用するにはどうしたらいいのか。活用の展望を描くには、まず基礎知識がなければなりません。今回の趣旨は、毎日耳目に触れるAIをまずは正しく理解すること。それを自社業務にどう生かすことができるのかと発想を展開していくために、知っておきたいポイントを効率よく理解するセミナーと位置付けました。
Too講師の梅田有希氏はまず、「明日話したくなるAI事例3選」としてAIの使用事例を紹介。
このうち、ある金融機関のコールセンターに関する実例に言及した同氏は「AI導入以前は、まるで辞書のような分厚いマニュアルをめくり、いま電話聞こえてきた内容に当てはまりそうなページを必死にめくりながら応対してきました」。10者10通りの質問を、その場でひらめきを基に応じるテレサービスは、確かに大変そうです。
「AIは声が形成する音の波形から音声認識を行います。電話口の内容から随時データベースにアクセスして関連すると思われる回答を逐次検索しては画面上へ複数自動表示していきます」と解説。導入した金融機関は「通話時間の短縮」「オペレーター育成期間の圧縮」「回答の質的向上」などの成果を上げていると報告して「経費削減を果たしながら、AIは学習を繰り返すことで精度も高めている」と、サービスの質が運用すればするほど向上していくAIの効用を説明しました。
分かりやすい現在の運用事例に続いて、同氏は基礎知識編として▽機械学習とディープラーニングの違い▽AIとは▽ディープラーニングの仕組み▽ディープラーニングでできること、といったトピックを体系的に論説。AIの歴史から、パーセプトロンとニューラルネットの違い、特徴抽出のしくみなどを概念図や平易な具体的事例を織り交ぜつつ、基礎知識をていねいに説いていきます。
固くなりかけた思考を解きほぐすように、梅田氏はグーグルが公開するユニークなサイトを紹介します。〝ニューラルネットワークは絵を認識できるようになるか〟をテーマとするグーグルの「QUICK,DRAW!」は、ユーザーがお題の「絵」をマウスでドラックしながら描き、モチーフを描く途中でグーグルが「分かった、これは●●ですね」と逐次当ててくるというサイトに触れました。
『あななたも世界最大の落書きデータセットに落書きを追加して公開し、機械学習の研究に協力してみませんか』の表題通り、世界中の〝リンゴ〟の絵を描かせることで〝リンゴとはこういうものだ〟というサンプリングを取り、学習させるというプラットフォーマーのおもしろいデータの吸い上げ方を教えてもらいました。
ほかにも、オープンソースを使用して「きゅうりの等級の仕分けをAIでさせる機械」を開発したという農家の事例などなど、AIの使い方を明示。その上で、貴社に当てはめAIで学習可能なデータは何があるかと提起します。
「データ量が多すぎて相関が複雑なもの、非構造化データ、ビジネス上のこだわっているナレッジもAIが代替できる」と位置付けて、過度な期待を払拭しながら社内の課題を明確化させる手法や発想法を触れるなど、濃度の濃い90分間の講演を終えました。
質疑応答では「これはAIの領域かプログラミングの範疇化か」「日常業務の例えばこういう場面にもAIに置き換えることが可能なのか」「AI先進国はどこで・どういった使われ方が始まっているのか」など、時間いっぱいまで意見交換を実施。懇親会の席まで話題は尽きず、会員に強い余韻を残した講演となりました。