9月の勉強会報告
任意団体ヴィープス(宍戸伊助チェアマン)は9月10日、オンライン会議ツールZoomを使用して月例勉強会を開催しました。
今期のメーン事業として、当初は3年振りとなる「オープンセミナー」の京都開催を企画していましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に配慮して開催中止に。この代替案として、京都シール印刷工業協同組合(山田裕彦理事長)とのオンライン勉強会の合同企画を催行。「3代目が会社をつぶす!?」を演題に、ヒロパートナーズオフィス代表で中小企業診断士の五島宏明氏が講師を務め、両団体から22人が参加しました。
冒頭、宍戸チェアマンが前述のような経緯説明を行って「Zoomのような利器や運用機会を積極活用しながら、こうした状況下でも足を止めずに学びを得ましょう」とあいさつ。次いで、山田理事長は「今回、ヴィープスさんからお声がけをいただき、こういう形で参加させていただきました。コロナがなければ、本来は先週の日程で顔を合わせ、勉強して会食して…との予定でした。形こそ変わりましたが、こうしてパソコンのモニターを介してでも一斉に同業者同士顔が見えるというのは、やはりいいものですね」と述べました。
今年58歳という五島氏は、修行から戻った後、30歳で元々祖父が創業した呉服屋の、ベビー子供服専門店3代目社長に就任。これまでの赤字を立て直し、24店舗のチェーンに成長させるも45歳で会社は倒産、自己破産へ。
友人のつてをたどり、再起をかけ鞄一つで東京に出てきたという五島氏は「天国から地獄の思いをして、これ以上同じ境遇の人を増やさないようにと自戒も込め中小企業診断士を志しました」と説明。90分間、3代目の〝失敗学〟という自身の経験を教材代わりに詳らかにすることで「今日はそこを共有しきます」と同氏。中小企業診断士の視点からなぜ失敗したのか・判断をどう誤ったのかを検証しながら経営論を説きました。
このうち「なぜ私は倒産したのか」の項では、人生の上り坂と下り坂でそれぞれ何が起き、何を誤ったかを分析。「いろんなダメな決断をしてきた」(同)と、合計特殊出生率や生産年齢人口といった人口動態を把握していない経営戦略、全国的なショッピングセンターの乱立の時勢に伴う収益構造の悪化などの要因を挙げます。その上で、倒産までの中で得たこと・学んだものとして「ありがとうの対義語は何か」と聴講者を指名。回答に窮する中、次のように説きました。
「有り難いの対義語は『当たり前』。住む家があり、大学に行けたことを当たり前だと思っていました。同様に3代目として入社して、社員がいること、銀行取引があることは当たり前でしたが、創業者にとっては当たり前ではない。銀行が取引してくれる大切さ、社員が働いてくれるありがたみ、すべて『ありがとう』な訳です。店舗では何千何万回と『ありがとうございました』と口にしながら、本質を私は何も分かっていませんでした」
今でこそ中小企業診断士の国家資格を取得したが、一度なくした信用は取り戻せないと同氏。クレジットカードを当たり前のように複数枚お持ちでしょうが、自己破産した私が1枚作るために本当に苦労しました。これ一つとっても何と有り難いことでしょう、と、一から企業を興す中で、当たり前がどれほど有り難いことなのかを痛感していますと語りかけました。
後半は中小企業診断士として、SWOT分析や内閣府の「経営デザインシート」や「価値創造メカニズム」などについて概説しました。
終わりに五島氏はこう問いかけました。
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人は何のために働くか。私の使命は何なのか。一度や二度は真剣に考えたことがあるでしょう。「命」を「使う」とは、一体どういうことでしょうか。
命は有限です。人は毎日死に近づいています。つまり、一人一人に与えられた寿命、持っている有限の時間を削って働いています。
すなわち、時間イコール命な訳です。この文脈で言えば、お客さまのために命を使ってお役に立つことが仕事だと言えるでしょう。
自分は命を使って何をするのか・命を使って何に時間を使うのか。そういったことに気がつき、あらためて向き合って考えるきっかけになれば幸いです。